研究内容

背景

大沼研究室では,モータ制御の研究をしています.

モータは,一般の人は日常生活でほとんど目にすることが無いかもしれませんが,意識して身の回りを見渡してみると,本当にいろいろなところに使われていることに気づきます.モータを回すというのは,電気の力を使ってものを動かすということですから, 普通の人なら誰もが,必ずといっていいほど,毎日毎日,無意識のうちにモータを回しているといっても過言ではありません.

モータを自由自在に操るために大事なのが,制御の技術です.モータ技術と制御技術とは表裏一体です.

近年,エネルギー・環境・資源問題を背景に,モータの高効率利用と,適用分野の拡大が進行しています.その中で,これまで産業用として広く用いられてきた誘導モータに比べて高効率化が可能な永久磁石同期モータが注目されています.永久磁石同期モータでは,ネオジム磁石など高性能な永久磁石を用い,解析技術,制御技術,生産技術などの向上により,小型・高効率・高出力なモータを,用途に合わせて最適設計することが可能となり,用途指向性の高まりに応じて,様々な同期モータが研究・開発され,それに応じた制御技術も進化が求められています.

概要

モータにもいろいろ種類がありますが,最近は埋込磁石同期モータ(IPMSM:Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)といわれるモータが注目されています.エアコンなどの家電製品,工場などで使われる産業機器,電気自動車やハイブリッド自動車など,その用途は多岐に渡ります.

IPMSMは,その名の通り,永久磁石を回転子の内部に埋め込んであるタイプの同期モータです.これに対し,永久磁石を回転子の表面に貼り付けてあるタイプは表面磁石同期モータ(SPMSM:Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)とよばれ, 制御性のよいモータとして,主にサーボ用途に使われてきました.

モータのトルク(回転力)は,主に固定子巻線を流れる電流によって作られる回転磁界と,回転子の永久磁石とが引き付け合う力(マグネットトルク)によって生じています.IPMSMにはこれに加えて,リラクタンストルクという力が利用できるという特徴があります.簡単に言うと,マグネットトルクは磁石同士のN極とS極が引き合う力で,リラクタンストルクは磁石が鉄を引き付ける力です.

つまり,IPMSMは永久磁石を鉄心の内部に埋め込んである構造なので,鉄心に作用する力が,回転磁界と回転子の相対的な位置関係によって均一にはなりません.そのため,これを利用して,うまく固定子に流す電流の位相を制御することにより,トルクアップが可能になるというわけです.

このようにIPMSMは,高効率で小型高出力化が可能といった特徴から,広く利用されるようになりましたが,制御のしやすさといった観点から見ると,やや扱いにくいという一面もあります.制御を行うためには,まず,一般に物理現象や制御対象の特性を,数式で表現するモデリング(Modeling)を行います.

モデリングの仕方,すなわち,制御対象の見方を変えることによって,扱いにくいIPMSMも容易に取り扱うことができるようになり,モータの持つ本来の性能を,十分に発揮できるようになるといえます.

技術解説

同期モータの位置センサレス制御

一般に同期モータを制御するには,回転子の位置を検出する位置センサが必要ですが,モータに位置センサを取り付けることは,信頼性の低下や配線に伴うコストの増加に繋がります.そこで,モータの電流・電圧などから回転子の位置を推定することで,位置センサを用いない"位置センサレス制御"について研究しています.

新しい座標系を用いた同期モータ制御の高性能化

交流モータの制御を行う座標系として,一般的には回転子の磁極方向を基準にとったd-q座標系が用いられます.しかし,近年の電気自動車,鉄道,家電機器,産業機器などに用いられる埋込磁石同期モータのような高効率・高出力な同期モータでは,トルクと電流の関係が非線形かつ複雑化しており,様々な用途や運転条件に応じて複雑な制御を行う必要があります.大沼研究室では,そのようなモータの制御に適した"新しい座標系"の考え方を提案し,その座標系に基づいた様々なモータの高性能制御法について研究しています,

ミニ研究

沼津高専では,2年生の前期にミニ研究という授業があります.ミニ研究では,学科に関係なく全教員に対して数名ずつの学生が配属され,PBL(Project/Problem Based Learning)型授業を行います.

大沼研究室では,2012年よりバドミントンのトレーニング用マシンの開発に取り組んでいます.

バドミントンロボット開発

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