佐藤崇徳・我孫子隆・杉田亜希子:
GISを用いた農業集落カード・データの分析
なお,フロッピーディスクにより提供されるデータは,CD-ROM によるものと同じデータが,各項目がカンマで区切られたテキストデータ(CSV)のファイルで,市町村および都道府県単位で提供されている。
本分析にあたって,発表者らは,農業センサスの調査区地図 (図2) を入手した。農業センサスの調査実施にあたっては,国勢調査と同様,調査区が設定される。通常1つの調査区は1つの農業集落に対応するが,集落内の戸数が多い場合など1つの農業集落が複数の調査区に分割される場合もある。いずれにせよ,単一の調査区ないしは複数の調査区が併合されたものが統計上の農業集落であり,1つの調査区が複数の統計地区に分割されることはありえない。したがって,調査区の区割りを表す地図を用いることにより,農業集落の位置を特定することが可能である。
農業センサスの調査区地図は,調査の実施を担当する各市町村において作成されたものが,農林水産省の出先機関において管理されている。ただし,調査区地図は,各市町村により作成されているので,調査実施に必要な最小限の情報に関して統一されている以外は,地図の縮尺など統一されていない。一般的には,市町村において作成している 1:10,000 程度の縮尺の都市計画図等がベースマップに用いられているが,山間部では 1:25,000 地形図が用いられているほか,部分的に,手書きの地図のところもあった。
調査区は領域をもったポリゴン (多角形) データであるといえるが,国土の全てをいずれかの調査区に割り当てているために,人家のない山林まで近くの集落の調査区に含まれているなど,調査区の領域が本来の集落の範囲を表しているとは言い難い。むしろ集落はマクロスケールで扱う場合には地点として捉える方がよいと考えられる。また,ポリゴンデータをデジタル化するには,同数の点データを入力するのに比べて多大な労力と時間が必要とされる。そこで,本分析においては集落の中心点の位置データを採用し,集落を点で表現することにした。
通常,位置データの取得にはデジタイザー等を利用するが,筆者は,以下に述べる手作業による方法で計測した。この方法は,座標値により地図上にオブジェクトを生成するという,本分析で用いたGISソフトMapInfoがもつ機能を利用したものである。MapInfoには「ポイント生成」コマンドが標準で用意されている。このコマンドは,緯度・経度など空間的な位置を表す座標値を表形式で用意すれば,そのデータをもとに地図上に自動的に点オブジェクトを生成するものである。したがって,何らかの方法で座標値を表す数値を計測できれば,デジタイザーを使用する必要はない。そこで,筆者はまず,上述の調査区地図をもとに各集落の中心点を国土地理院発行の 1:50,000 地形図にプロットした (図3)。そして,その地図上のXY座標を定規で計測することによって,各集落の緯度・経度のデータを取得し,集落コード (調査区地図に記入されている),中心点の経度,緯度の値をコンピュータに入力した。以上の作業により,集落コード,緯度,経度の3フィールドをもった地理行列のデータが作成された (図4)。
【図3 集落位置データの取得手順 (2) 地形図への集落中心点のプロット】
【図4 集落位置データの取得手順 (3) コンピュータへ入力された座標データ】
インポートしたデータテーブルと地図オブジェクトをもつデータテーブルは,そのままでは互いに関連をもたない別個のデータテーブルとして扱われる。しかし,両者はともに集落コードをもっており,この集落コードをキーとして2つのデータテーブルを結合することによって,集落の位置を表す地図上のオブジェクトと農業集落カード CD-ROM から取り出した属性データを一体的に扱うことができるようになる。
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