丹那断層で行われてきた最新の活断層研究

断層を掘る

 2000年2月,静岡県田方(たがた)郡函南(かんなみ)町。酪農で有名な丹那(たんな)盆地から北へ数km行った田代盆地の一角にある水田で,作業は行われていた。クレーンやパワーショベルが持ち込まれ,鉄板を加工した器材などもある。そのまわりで数人の男たちが,大地に掘られた溝を見つめながら動いている。一見したところでは土木建設工事のようにみえる。
 しかし,それは建設工事ではないし,彼らは建設会社の作業員でもない。彼らは何者なのか?
 東京大学地震研究所,広島大学,山梨大学,そして民間の地質調査コンサルタント。所属はそれぞれだが,彼らはいずれも日本を代表する活断層研究者とその卵たちである。
 活断層――それまで地形学の学術用語だったものが,阪神・淡路大震災によって,世間でも注目されるようになった。神戸市など都市部での甚大な被災状況とともに,淡路島で地表に現れた断層の姿を覚えていらっしゃる方も多いことだろう。
 大地にかかる大きな力が,あるとき亀裂を発生させる。大地は亀裂に沿ってずれ動く。それが活断層であり,そのときの衝撃が地震である。活断層が地表に割れ目を生じさせながら動き,大地震を発生させたのは,明治以降の日本でも何度かあった。田代盆地から丹那盆地にかけてを貫く丹那断層もそのひとつである。

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