愛鷹ローム層の標本

愛鷹ローム層


愛鷹ローム層ってなに?

 愛鷹ローム層は,愛鷹山の山麓斜面の上に,富士山や箱根火山から噴出した火山灰など(テフラ*)が堆積し,粘土化した地層です。
 およそ10万年前以降に堆積した地層と考えられており,その厚さは10〜20mになります。
 下に位置する(古くに堆積した)ほうから下部ローム層,中部ローム層,上部ローム層と3つに大きく分類されます。また,上部ローム層の上には,まだ風化の進んでいない現世(およそ1万年前以降)の火山灰が覆っています。
 沼津高専において標本として保存・展示されているのは,地表から深さ8mまでの地層で,愛鷹ローム層の上部〜中部にあたります。

火山灰はどこから飛んできたの?

 愛鷹ローム層は,おもに富士山(古期富士火山)から噴出した火山灰やスコリアで構成されています。なお,どのようにして火山灰が堆積し,ローム層が形成されたかについては,噴火による直接的な降下堆積物であるとする説と,いったん富士山東麓に降下・堆積した火山灰が風によって飛ばされてきて堆積したとする説の2つの学説がいわれています。
 富士山からのほかに,箱根火山から噴出した軽石も含まれています。例えば,下部ローム層中には約5万年前の火砕流堆積物(Hk-TPfl),また中部ローム層中には箱根三島軽石(Hk-CC4,約4万年前)を見ることができます。
 また,もっと遠くから飛んできたテフラも,少量ですが含まれています。例えば,およそ2万年前に姶良カルデラ(現在の鹿児島湾)から飛んできた火山灰(AT)**などです。これらは日本列島の広い範囲に降り積もったので,広域テフラとよばれ,各地の地層の年代を対比するときの指標として使われています。

* テフラ(Tephra):
様々な大きさの軽石,スコリアなどの火山砕屑物のことで,爆発的な火山活動によって生成される。粒径等により,火山岩塊,火山礫,軽石,スコリア,火山灰に分類される。
このうち,火山灰とは粒径が2mm未満のものを指す。また,粒径が2mm〜64mmの発泡した粒子のうち,白色のものを軽石,黒色のものをスコリアという。

** AT(姶良Tnテフラ):
およそ2万年前に,南九州の姶良カルデラ(現在の鹿児島湾)から噴出したテフラ。上空に噴き上げられた火山灰が偏西風によって東北地方あたりまで運ばれたと考えられている。火山灰中のガラス質の部分は風化せずに残るので,関東周辺でも各地で観察されている。


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