return to upper page Update2005/11/29;  New2005/11/29

E3実験 演算増幅器の実験のためのひながた


注意1
実験レポートをかくための足がかりとして,ひながたを作ってみました。 6つある回路のうちの1つを例にしましたが,他の回路も同じやりかたで書くことができます。

注意2
注意すべき点を「注意」や「確認」といったコラムで示しますが,これらのコラムは報告書に残すべきものではありません。

注意3
以下のひながたは望月の趣味だけで書いたものではありません。
実験の「目的」や,指導書で設定している「習得」に沿って論理的に考えてゆくと自然にこういったものが出来上がるのです。
ただし,「このひながたが唯一の正解」というわけではありません。文章というものは各筆者の個性が現れるべきものです。報告者の数だけ様々な正解があるはずです。ただし,どの場合でも必要なところを抑えておく必要があります。

注意4
以下のひながたでは,図番号や式番号として適当な数字が入っています。これは望月が勝手に予想したものであって,各学生のレポートごとに数字は変化するはずです。

注意5
このひながたで使っている実験結果は,実際の実験で測定した値です。でっち上げたものではありません。このことは非常に重要なことです。
もしも,実験していない値を使ったとしたら,それはデータの捏造(ねつぞう)です。これは非常に罪の重いことであり,もしも捏造が1箇所でもあれば,指導者はレポート受取を拒否して当然だと思います。
レポートを書き始めてからどこかのデータの不足に気が付いた場合,勝手にその値をでっち上げる(=ねつぞうする)のではなく,指導者に相談してください。

確認1
実験の目的:
・演算増幅器の原理を学ぶ 
・基本的な使い方と,いくつかの応用回路を習得する 

望月は"習得"について次のように考えています:
「習得したとは,回路図を見ただけで,回路の真の動作がわかるということである。 また,習得した学生には,回路特性の測定した結果は予想通りである。

確認2
「確認1」を分解して考えると,"習得"をレポートに示すためには,各回路について前半後半の2つの作業が必要である。
前半は,式の導出である。演算増幅器の性質を見極めながら,回路と入力信号が決まっているときに,各部にはどのような信号が現れるか予想することである。通常は「入力電圧×定数」(定数は回路内の抵抗値等によって決まる)が,各部の電圧である。
後半は,実験で得られた値(または波形)と,前半で求めた式との比較検討である。習得した学生には,予想通りの実験結果が得られているはずである。

実験(4) 非反転増幅回路

非反転増幅回路の回路図を図8に示す。

このあたりに図8を入れたらよい。あるいは,レポートの最後に全ての図表をまとめてもよい。

 

 

演算増幅回路の性質により,仮想ショートが成立ち,反転入力端子と正相入力端子の電位は等しいため,V2 = V1 となる。また,演算増幅器の入力インピーダンスが無限大のため演算増幅器の入力端子には電流は流れない。  (以下略   紙の指導書や,Webの指導書や,E3電子回路の教科書に,回路解析が載っているので,参考にして,数式を導こう。)

以上の結果,入力電圧を Vin とすると,各端子には次の電圧が現れると予想できる。

正相入力端子の電圧 V1 = Vin   (13)  (入力端子とショートしているため)

反転入力端子の電圧 V2 = Vin   (14) (仮想ショートのため)

出力電圧 Vout = Vin × (R1+R2)/R1     (15)

次に,実験のグラフを図9に示す。この結果を眺めると,線が重なっていることから式(13),(14)が満たされていることが分かる。また,式(15)からは Vin と Vout が同位相であることが予想できるが,グラフからもそのことが確認できる。(先の反転増幅器では,Vin と Vout は逆位相だった。)

このあたりに図9が入れたらよい。あるいは,レポートの最後に全ての図表をまとめてもよい。

 

 

続いて,実験で測定した電圧について考察する。表4に測定した結果を示す。同表には,検討した値も入れた。

注意6
表4の Vout について,測定したり記録した値からそのまま計算した@と,実験結果のCを比較すると,両者の違いはたったの 0.29% です。(こうした「違い」に対する正しい論じ方の例は,ひながたの本文を見て下さい。このコラム(注意5)では,誤差の取り扱いについて注意します。
この数字を見て,条件反射的に 「0.29%は小さいので無視してよい。従って@とCは一致しているといえる」 という論じ方が一部の学生のレポートに見られますが,これは明らかに間違いです。
例えば,2005年8月にヘルシンキで行われた世界陸上の,マラソンの上位3名の記録は,
1位  2:10:10, 2位 2:10:21, 3位 2:11:16 
でした。これを,1位の記録を100として計算しなおすと,
1位  100, 2位 100.14, 3位 100.85 
になります。1位と2位の記録の差はたった 0.14% (という,0.29% よりも更に小さな数字)ですが,1位と2位はきちんと区別して取り扱われます。
これは,「時計」という時間計測は2時間の計測に対して1秒の差を保障できるからであす。
肝心なことは,その計測に用いた測定方式や測定装置にはどれだけの精度を保証できるか,誤差はどこまで入り得るかということをきちんと把握することです。

誤差を考慮しながら,Cの値の妥当性を検討する。

実験で用いた DAQ には,5mV の誤差がある。また,実験で用いた抵抗は誤差コードの色が金色だったことから 5% の誤差が考えられる。以上のことを考慮し,表4 の@の条件のときに予想される最大の Vout と,最小の Vout を計算し,AとBに示した。
実験結果 C は,AとBの範囲に入っている。従って,Cの値は妥当なものであると言える。

以上のことから私は実験結果を正しく予想できたと言える。従って,私はこの回路を習得したと言える。

表4 理論と実験の比較

    Vin R1 R2 増幅率
=(R1+R2)/R1
Vout
@ 実験で測定や記録した値。ただし,増幅率とVoutは式(15)から導いた 2.426 V 10 kΩ 10 kΩ 2 4.852 V 
(計算値)
A 各パラメタの誤差が,出力を大きくする方向に働いたときの出力値 2.426+0.005 V 10k*1.05=
 9500 Ω
10k*0.95=
 10500 Ω
2.11 5.12 V
 (計算値)
B 各パラメタの誤差が,出力を小さくする方向に働いたときの出力値 2.426-0.005 V 10k*0.95=
 10500 Ω
10k*1.05=
 9500 Ω
1.90 4.61 V
 (計算値)
C 実験で測定した値         4.866 V
  (実測値)

 

注意7
表4の AとBVout について,3桁だけ記入してあります。
計算の過程で使った 10.0kΩの抵抗器には3桁目の数字に誤差があり,10.5kの抵抗値とも考えられる。そのため,計算の有効桁を考えたとき,4桁目や5桁目には全く意味がありません。そのため,3桁表記としました。
いくら電卓に表示されたとしても,ここで4桁目を書いてはいけません。4桁目の記述は捏造(ねつぞう)の一種です。