第2節 社会の変化と新思想

1. 都市の成立

 やがてバラモン文化は東方へ広がり、ガンジス河中流地方に伝わる。その伝播にともなって異文化との交流から文化の融合が起こった。また鉄器の使用が普及するにつれて、農業生産が増大し、商工業が盛んになり、社会構造にも変動が起こった。商業都市が、ガンジス川流域に成立した。ヴェーダの成立基盤となった王国は没落し、代わってマガダなど十六国が商業都市を核として起こった。

 ヴェーダ祭式の基盤となっていた半農半牧の社会においては「人間対自然の関係」が関心の焦点となっていたが、多様な人間関係が現れる都市においては、「人間対人間の関係」に関心が移った。このような問題について、それまでの婆羅門の祭式思想は無力であった。また、動物の犠牲を必要とする祭式が都市においては経済的に困難になり、実行し難くなった。このため祭式思想に代わる新しい思想、モラルの追究が起こった。

 この時代に現れた思想が、その後のインドの思想・宗教を特徴づけた。その主なものをあげておこう。


【次へ】【目次へ】