2)ヤジュニャとプージャー
宗教行為をサンスクリットでは、karman(行為)という語で表す。これは二種類に分けられる。ヤジュニャ (yajña) とプージャー (pūjā) である。
ヤジュニャとプージャーを厳密に分けることはむずかしいが、ヴェーダの宗教の儀礼の中心に位置する「祭式」(ヤジュニャ)は、執行者がバラモンに限られている。また、動物の生贄が用いられることがある。
これに対して、ヒンドゥー教の儀礼はプージャーである。プージャーは「尊敬」「礼拝」「供養」を意味する。プージャーの形式の一部はヤジュニャに起源が あるが、異なる要素も見られる。執行者は特定の階級に限定されない。誰でも行う。また、供物として用いられるのは、花輪、水、香、食べ物などである。普 通、動物の生贄は用いない。(女神カーリーにヤギの犠牲を捧げるような例外はある。)また、神々をたたえる歌や踊りがしばしば行われる。
大規模なプージャーとしては、ベンガル地方のドゥルガー・プージャーが有名で、女神ドゥルガーを安置した山車を引き回し、神聖な河ガンガーに浸す。ここ でも先住民族の宗教行為を吸収した形跡が見られる。プージャーの一部である花や香の供養は、仏教によって日本にも伝わっている。
辛島昇・奈良康明『インドの顔』河出書房新社、1975年、p.159f.