5. バクティ(信愛)

 『バガヴァッド・ギーター』8)において最もすぐれた道として説かれるのが「信愛」すなわち神に対する恋愛感情にも似た熱烈な信仰である。苦行を行うこと、善行を行うこと、あるいは知を追求し悟りを開くことも重要であるが、最もすぐれているのは「信愛」で、最高神ヴィシュヌに対し、献身的な信仰を捧げて崇拝するなら、だれでも神の恩寵にあずかることができると説く。この思想は、その後のヒンドゥー教の信仰のあり方に大きな影響を及ぼした。


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8)インドを代表する聖典で、戦争叙事詩『マハーバーラタ』の一部として伝えられてきたものであるが、独立の書として読まれることが多い。マハーバーラタ戦争がいよいよ始まる時に説かれるという設定になっているが、宗教哲学的な色彩が強く、元来は『マハーバーラタ』と起源が異なって、クリシュナをバガヴァットとして崇める宗教の聖典として成立したと考えられている。辻直四郎『バガヴァッド・ギーター』講談社、1970年、315頁。【本文へ】