ブッダは、神あるいは神秘的なものを説き、それへの信仰あるいはまじないによって、問題を解決しようとしたわけではなかった。呪術、占いは禁止された。
「呪術、夢占い、人相占い、星占い、鳥占い、懐妊術を行うな。わたしの教えにしたがうものは治療術にかかわるな。」(Sn.927.)
しかし、『スッタニパータ』第 5章でも、最古層とはみなされない「序」976ー1031には、ブッダの神秘化・神格化の進んだ説が現れ、信仰が肯定的に説かれる。
「根源的な無知が頭であると知れ。明知が信仰と思念と精神統一と意欲と努力に結びついて、頭を引き裂く。」(Sn.1026.)
当初のブッダの教えは、宗教的というよりも合理的で倫理的であったが、ブッダの教えに信頼を寄せ、帰依する人々の集団が形成されるにともなって、急速に宗教性が強まったものと考えられる。