6. 教理(2)ーー四諦・八正道

 伝統的な解釈によれば、縁起はブッダが菩提樹の下で悟りを得たとき、禅定の中で観察したものである。いわば、ブッダみずからが苦しみについて理解するためになされた考察である。これに対し、縁起説を他人のためにわかりやすく説き示したのが四諦・八正道であるとされる。

 四諦(cattāri saccāni)とは「四つの真理」のことで、しばしば神聖なものとして四聖諦(cattāri āriya-saccāni)、すなわち「四つの聖なる真理」といわれる。

 縁起説と同じく、これも初めから定型的に説かれていたわけではないが、ごく早い時期に形式化された。すでに『ダンマパダ』百九十、百九十一偈に出る。

 「四つの真理」とは、(一)現実が苦しみであること、(二)それには原因があること、(三)苦しみの止滅、(四)その止滅へいたる道のことである。定型的な表現によれば、次の四つである。

      1. 苦についての聖なる真理(苦聖諦)
2. 苦の起因についての聖なる真理(苦集諦)
3. 苦の止滅についての聖なる真理(苦滅諦)
  4. 苦の止滅にいたる道についての聖なる真理(苦滅道諦)
 これらはしばしば略して、「苦・集・滅・道」といわれる。

 「八正道」あるいは「八聖道」は、苦しみの止滅にいたる道を具体的に説いたもので、八つの正しい生活法・実践法である。八つとは正しい見解(正見)・正しい意志(正思)・正しいことば(正語)・正しい行い(正業)・正しい生活(正命)・正しい努力(正精進)・正しい意識(正念)・正しい精神統一(正定)である。


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