1.3 六方最密充填

 前節では、最密充填層を2つ積み重ねてみました。この節ではもう1つ増やして3つの最密充填層を積み重ねてみましょう。例えば、下の図のような場合です。図をクリックするとVRMLを見ることができます。

ABAのパッキング

 上の図では、分かりやすくするために1層目と3層目を緑色の球で、2層目を赤い球で表しています。真上から見た場合、1層目と3層目の球は、同じ位置にあることが分かると思います。すなわち球の並びから考えると、1層目と3層目は全く同じ物なのです。 この並び方をさらに続けていくと、4層目には2層目と同じ物、5層目には1層目と同じ物....と続けていくことができます。

ABABAのパッキング

 このような並び方を、1層目の並びを「A」、2層目の並びは「B」として、「ABAB...の並び方」などと言うこともあります。

 さて、ここで下の図を見て下さい。この図は、前の節でも紹介しましたが、最密充填層を2層積み重ねた図ですが、見やすくするために間隔はそのままで、球を少し小さくしています。

2層における六角形

 この図において、1層目の緑の球一つと2層目の赤の玉の一つを合わせた2つの球を一単位とし、その代表点を図でオレンジ色で示したところとします。この図では球の数が少ないので少し分かりにくいですが、この代表点の周りの環境はどこの代表点でも同じになります。このような代表点を結晶学では格子点と呼びます。次にこの格子点を線で結ぶと、真ん中に中心のある六角形が出来ますね。最密充填層をさらにもう2層積み重ねると、同様の六角形がまたできますから、2つの六角形をつなげると下の図に示すような六角柱ができます。

充填で生じる六角柱

 球をもっと多くすると、空間内の格子点(代表点)は全て、この六角柱を並べることによって記述することが出来ます。この六角柱は六回対称軸をもっており、六回対称軸を持つ結晶を、結晶学では「六方晶系」に属すると言います(なお、六方晶系の単位格子は白い線で表した四角柱の方をとります)。以上のことから、「ABAB...」の積み重ね方を「六方最密充填 (Hexagoal Closest Packing) 」と呼び、英語の頭文字をとって、「hcp」という言い方が良く使われます。


この節のまとめ

KEY WORDS