
カオスとはなにか
流体の運動:液体や気体の流れは、流体の方程式であるNavier-Stokes方程式で完全に記述できる。しかし、この方程式は、一般的には解がない。つまり、ルールはあっても、「いつどこでなにが起こるか」を書き下すことができない(コンピューターを使って数値計算することならできるが)。こんな奇妙なことになったのは、この方程式が「非線形」だからである。流体にかぎらず、非線形の方程式に従う運動は、多様で複雑になりうる。お天気も雲の流れも流体の運動に他ならないから、乱れていて当然と言える。
株価の変動:株価は大勢の人の売買によって決まる。そこには無数の「判断」が関与する。このように連携しない無数の要因で決まるような変動は複雑である。この変動には、単純なルールを当てはめることはできそうもない。ただし、最近コンピューターで株の売買を決定する人が増えてきて、様相が変わってきた。似たようなプログラムに従って大勢の人が株の売買をすると、結果的には「単純な」ルールに従って株価が変動することになる。近年の株の暴落にはこのようなルールの単純化によって起こったとされているものもある。
コインを投げて表が出たら0、裏が出たら1としよう。これを10回繰り返して、たとえば次のような列を作ろう:
「0010110101」
このような列をランダム列と言う。11回目がどうなるかは、これまでの10回の結果には全くよらない。このような現象は確率で表現される。この例では、次の回が1になる確率は、いつでも0.5である。また、この列の特徴は、平均値や分布を使って表すことができる。典型的なランダム現象の物理的な例に放射性元素の崩壊がある。
決定論的な列―――ふつうは規則的・自由落下や振り子の振動つぎに振り子の振動を考えよう。振り子の運動は、現在のおもりの位置と速度がわかれば、未来も過去もすべてわかってしまう。このように、現在の状態で次の運動の様子が決まってしまうことを「決定論的」という。
現在を t=0 としよう。現在の測定値は x0 である。「決定論的である」とは、式で書くと、
xt+1 = f(xt)
と書けることである。このfは、現在の測定値から次の測定値を決定するルールを表す。
カオスをつくるルールとカオスの顔
Un+1 = p Un (1)
であらわされる。普通、増殖率は1より大きい。すると、(1)式では個体数が無限に増大してしまう。人口爆発である。実際の生物では、ふつう個体数の増加とともに増殖率が小さくなり、人口爆発は生じない。餌が有限だからである。ゾウムシも増えすぎるとマメが足りなくなり、増殖率が減ってくる。このことを、
p = p0 -hUn (2)
で表現しよう。p0 は定数である。このとき(1)式は
Un+1 = p0 Un -h Un2 (3)
となる。ここで、すべてのnについて Un = (p0/h)Xn で置き換えると、(3)式は簡単に、
Xn+1 = r Xn (1-Xn) (4)
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