2001年8月,ニュージーランドで開催された国際生理科学会に参加したときの記録です。
この学会は,細胞から人体まで広い範囲の生理科学をカバーした権威ある国際学会として知られています。お金を持った医学者がたくさん集まるため参加費が高くて,貧乏な物理学者としては敬遠したい学会なのですが,生物物理を始めちゃったので勇気を出して参加することにしました。
普通,国際学会というのは,参加は自由ですが,発表は審査を通らないと認められません。どうせ参加するのなら発表しないとつまらないので,イセエビの心拍解析の結果を発表したいと申し込みました。英文の要旨を投稿して,待たされること約1ヶ月。OKの返事とともに,会議のプログラムが送られてきました。危惧していたとおり,物理学者は私ひとりでした。不安・・・・。発表形式には,ポスター発表と口頭発表の2通りあって,私の発表はポスターでした。(あるていど成果がまとまったら口頭発表,がんがん議論したい状況ならポスターがやりやすい。ふつうは,申し込み時に希望をとります。)
大きなプリンターは持っていなかったので,A3にカラーで印刷して会場に持っていきました。国内の物理学会ならば,ちょっときれいなポスターを持っていけば結構目立つのですが,さすが,医学者が集まる学会だけあって,まわりのポスターはどれもでかい紙にカラー光沢印刷された見事なものでした。まあ,内容で勝負なんですけどね。

右がわたし。会話の相手は,カナダの心臓の大家のProf. Wilkensです。Good workだと励ましてくれたし,いろいろアドバイスもしてくれました。若手の研究者もおおぜい来ましたが,総じて分野が違うし,若くて元気がいいし(したがって英語も早い!),言っていることはよくわかりませんでした。日本人も何人か発表していましたが,みな日本人同士で話し合い,時間が来たら連れ立ってさっさと居なくなってしまいました。しまった,置いていかれた・・・。このWilkens先生は,私と食事までつきあってくれました。
この学会の会期は5日間でした。私の発表は初日。発表が終わってからは,興味深いセッションがある日は会場に,そうでない日はニュージーランドの国内探査にでかけました。

学会が開かれたのは,クライストチャーチという町で,これはそこの大聖堂です。
左の塔が鐘つきのための塔,右のどっしりした建物が教会になっています。教会では週に何度もミサが開かれ,信徒でない我々でもおとなしくしていれば見学させてくれます。外側はレンガですが,内部にはふんだんに木が使われていました。ニュージーランド建国当初は,大きな木がいくらでもあったのだそうです。塔の上部だけ色が違いますが,これは,地震で倒れたたあと修復されたからだそうです。修復には世界中によびかけてコンペを開き,地震国日本の建築家の案が採用されたのだそうです。

これはカンタベリー大学の旧校舎です。この大学には有名な原子物理学者のラザフォードが居たことがあり,この建物は今でも「ラザフォード・デン」と呼ばれています。カンタベリー大学は郊外に移転して,ここは現在アートセンターとしてにぎわっています。

入り口の上にPHYSICSと書かれたこの建物は,ラザフォード当時の物理学科が入っていた建物です。中は改装されて,みやげもの店や木工の工房として使われています。木工が盛んなのも,むかし木がふんだんにあったからでしょう。今はどうかというと・・・

これが,現在のニュージーランド(カンタベリー平野)の典型的な風景です。ずーーっと広がる草地は牧場です。背後の山にも木らしい木は生えていません。この辺は雨が多くはないので,はげ山でも洪水になることはないようです。でも,木を切りすぎたことへの反省の念は強くて,前方の山の頂付近には,マツの幼木がびっしりと植林されていました。(もっともそれは北米原産のマツなので,昔のこの山の本来の自然には決して戻らないわけです。)

これはカンタベリー平野からMt.Huttへの山道です。えらく険しい地形ですが,ここにもマツが植えられています。ものすごい根性です。私が,なんでこんな山に行ったかというと・・・

この山は有名なスキー場になっているからです。標高3000m近いこの山の頂付近には,立派なスキー場があって,世界中からスキー客が集まってきます。よくみると白い山の真ん中あたりにリフトが見えます。雪質は非常によく,ゲレンデもゆったりとしていて快適なスキー場です。スキースクールも完備していて,初心者から上級者まで,5つくらいのクラスが毎日開かれていました。

ここはニュージーランドの南極側の海です。この海はしょっちゅう荒れていて,この日も強風でした。海岸にごろごろ転がっている丸石は,Moeraki boulderと言い,昔この辺がもっと暖かかったころ,生物の遺骸が海底の泥中に堆積し,それを核として周囲の石灰分が球状に凝固したものだそうです。つまり,一種の化石ですね。以前は,大小いろいろ転がっていたそうですが,小さいのは「おみやげ」に持って行かれて,こんなでかいのしか残っていないそうです。もちろん今では持ち出し禁止。

この海岸には,絶滅が危惧される「キガシラペンギン」が生息しています。実はそのペンギンに会いたかったのですが,写真の小屋の中で夜まで待ち,ペンギンが海から上陸してきたら,脅かさないように声を立てず,小屋から一歩も出す,じっと見るのだそうです。そんな根性ないのであきらめました。写真の二人は,今から気合が充実していて,話しかけても返事もしてくれませんでした(英語が通じなかっただけかも)。後日,海のクルーズに参加したら,海上にいっぱいペンギンがいるではありませんか(別の種類でしたが)。養殖のさかなを,食べちゃうそうです。
これでおしまいです。
学会より観光のことの方が長くなりましたが,国際会議ってそんなもんです。