Potential

水滴のポテンシャル(位置エネルギー)は,表面張力による位置エネルギーと重力の位置エネルギーの和である。高速撮影された画像から表面積と重心の位置が計算できるので,これらからポテンシャルUを計算した。ポテンシャルを,水滴の質量mと重心の位置zGの関数とみると,図のようなポテンシャル面が描ける。中央の谷間より右側ではzGの値が大きいので,重力の位置エネルギーが小さい。しかし,水滴が引き延ばされたような形状をしているため,表面積が大きく,したがって表面張力による位置エネルギーは逆に大きい。谷間の左側では,逆に重力の位置エネルギーが大きくて,表面張力の位置エネルギーは小さい。ポテンシャルが極小となる谷底では,重力と表面張力がつりあって,最も安定な形状となる。

水滴の運動は,このポテンシャル面がつくる谷間に,パチンコ玉をそっと落としたときのパチンコ玉の軌跡で模式的に表すことができる。パチンコ玉は,落とされた位置(初期状態)によって,矢印のように運動するだろう。ポテンシャルの谷を作っている右側の尾根は,質量mが大きくなると消失してしまう。したがって,パチンコ玉は,何回か谷間を往復したあと右側の崖から落下する。このことは,水滴が成長しながら何度か振動すると,もはや「縮む」ことができなくなり落下することに対応している。
さて,なぜ水滴の運動がカオスになるかは,ポテンシャルの右の尾根の消失と関係がある。パチンコ玉が,この尾根の消えるあたりに差し掛かると,ちょっと勢いが強ければ,低くなった尾根を乗り越える(水滴が落下する)だろうし,逆に勢いが足りなければ,尾根に跳ね返されて,もう一度振動してしまうだろう。水滴が落下するかもう一度振動するかは,ほんの些細な運動状態の違いで決定されることになる。このように,ほんのわずかな状態の違いが,大きく異なる運動を引き起こすのがカオスの典型的な性質なのである。カオスの持つこの性質を,「初期値敏感性」あるいは「軌道の発散」という。

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