おからの効能
(沼津高専・芳野研究室)
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1.おから (bean curd defuse)について
定義:大豆(soybean)から豆腐(bean curd)を作る時の豆乳の絞りカス。
特徴:大豆1kgから1.4kg生産され、その85%は水分である。
繊維その他の不消化物が多く、消化が悪い。
タンパク質や脂質を含むため、飼料として利用されている。
2.用語の説明
(1)粗繊維と食物繊維の違い
以下の話しの中には粗繊維と食物繊維という言葉が出てくる。
粗繊維量:食品成分表中の炭水化物(繊維)の項目の値であり、セルロースやリグニンの60〜70%を含む。これには、ヘミセルロースや
ペクチンは含まれない。もっとも、厳密に云うと、リグニンは糖(炭水化物)には含まれない。
食物繊維量:ヒトの消化酵素により分解されない植物の多糖類とリグニン、または食物成分の総体の量を云う。後に述べる血中コレステ
ロール上昇抑制作用や大腸ガン抑制作用、糖尿病治療が期待されているのは、こちらの方である。この含量の高い
(0~36%)食品としては、かんぴょう、干ししいたけ、海藻類などがある。
3.大豆の成分と効能
(1)タンパク質(SPI, 分離大豆タンパク質,フジフローR,不二製油)
血中中性脂肪上昇抑制作用:N. Iritani, et al., J. Nutr., 116, 190-197 (1986).
脂肪肝発症予防作用:N. Iritani, et al., J. Nutr., 116, 190-197 (1986).
(2)食物繊維(SBF, 大豆繊維素材,日清製油,69%繊維と22%タンパク質を含む)
血中コレステロール上昇抑制作用:永田純一,他,日本栄養・食糧学会誌, 48, 133-139 (1995).
血中中性脂肪上昇抑制作用:永田純一,他,日本栄養・食糧学会誌, 48, 133-139 (1995).
脂肪肝発症予防作用:永田純一,他,日本栄養・食糧学会誌, 48, 133-139 (1995).
(3)食物繊維(組成;ヘミセルロース50%, ペクチン質30%, セルロース20%)
血中コレステロール上昇抑制作用:野崎郁夫,他,第38回日本栄養・食糧学会講演要旨集,81 (1984).
注:ヘミセルロースには上記作用は弱い
(4)サポニン(配糖体)(オカラ中に0.1%含まれる)
血中コレステロール上昇抑制作用:大南宏治,他,栄養と食糧, 34, 105-108 (1981).
以下に対する抑制作用期待;ウイルス性癌、血栓症、肝障害、動脈硬化、異常肥満の予防、エイズウイルス増殖
(5)脂質成分
A. ステロール
血中コレステロール上昇抑制作用:D. W. Peterson, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 78, 143 (1951).
B. ポリエン酸
血中コレステロール上昇抑制作用:G. Schlierf, in Polyunsaturated Fatty Acids, pp.183 (1977).
C. リン脂質
血中コレステロール上昇抑制作用:K. Imaizumi, et al., J. Nutr. Sci. Vitaminol., 28, 281 (1982).
4.おから100g中の成分(食品成分表より)
水分:81.1g,タンパク質:4.8g,脂質:3.6g,炭水化物:(糖質);6.4g,(繊維);3.3g,灰分:0.8g,
無機質:(カルシウム);81.1g,(リン);81.1g,(鉄);81.1g,(ナトリウム);4mg,(カリウム);230mg,
ビタミン:(A);0,(B1):0.11mg,(B2);0.04mg,(ナイアシン);0.3mg,(C);0,エネルギー:89kcal.
他の食品に比べて比較的含量の多い成分としては、(炭水化物としての)繊維、カルシウム、ビタミンB1などがあげられる。
カルシウムの含量が高い食品としては、他に牛乳や魚骨などがある。ビタミンB1の含量が高い食品としては、他に穀類、
牛乳、肉類などがある。
乾燥重量当たりでは
タンパク質;24%:高橋時夫,他,日本栄養・食糧学会誌, 39, 377-384 (1986).
脂質;11%:高橋時夫,他,日本栄養・食糧学会誌, 39, 377-384 (1986).
NDF(neutral detergent fiber);24%(粗繊維として25~27%):松橋鉄治郎,大豆開発, 40, 9 (1977).
糖質+灰分;37%(総食物繊維として36%):竹山恵美子,他,昭和女子大学生活科学紀要, 526, 110 (1983).
ペクチン(水溶性食物繊維);1.6%:松尾眞砂子,他,日本農芸化学会誌, 66, 899-904 (1992).
;総繊維の20%:竹山恵美子,他,昭和女子大学生活科学紀要, 526, 110 (1983).
5.おからの成分と効能
(1)タンパク質(食物繊維との併用効果が考えられる)
血中コレステロール上昇抑制作用:高橋時夫,他,日本栄養・食糧学会誌, 39, 377-384 (1986).
M. W.Huff, et al., Atherosclerosis, 28, 187 (1977).
(2)食物繊維
血中コレステロール上昇抑制作用:松尾眞砂子,他,日本農芸化学会誌, 66, 899-904 (1992).
肝脂肪蓄積予防作用:松尾眞砂子,他,日本農芸化学会誌, 66, 899-904 (1992).
(3)ペクチン(水溶性食物繊維;難溶性繊維よりも効果が大きい)
血中コレステロール上昇抑制作用:松尾眞砂子,他,日本農芸化学会誌, 66, 899-904 (1992).
竹山恵美子,他,昭和女子大学生活科学紀要, 526, 110 (1983).
(4)NDF (neutral detergent fiber)
血中コレステロール上昇抑制作用:高橋時夫,他,日本栄養・食糧学会誌, 39, 377-384 (1986).
6.おからに関する研究報告
1981〜97年の期間で、「おから」で400件程、「オカラ」で500件程が見つかる。
「おから」+「繊維」+「コレステロール」で検索される研究報告は6件程で、上記の話しの中に紹介されていないものとして、以下
の報告等がある。
(1)増竹憲二,浅野広和:食物繊維の機能とその評価法 大豆食物繊維の開発とその機能,月刊フードケミカル, 11, 30-32 (1995).
(2)前田裕一:特集 清涼飲料の新傾向 水溶性大豆多糖類「ソヤファイブ-S」の飲料への利用,ジャパンフードサイエンス,
33, 29-33 (1994).
7.特定保健用食品
大豆に関係する特定保健用食品としては、すでにダイズオリゴ糖やダイズタンパク質を成分とするものが認可対象となっている。
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