分子生物学への誘い(長寿を獲得した線虫の運命は?)
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<概要> カナダの研究グループが、線虫の寿命をコントロールする遺伝子群(4遺伝子)をクロー ニングすることに成功した。  これらの遺伝子は、clk-1,clk-2,clk-3,gro-1と名づけられた(clkとはclockの略である)。 これらの遺伝子が正常であると、線虫は通常の寿命(9日)である。ところが、変異が生 じると2倍から5倍まで寿命が延びたのである(ほぼ2ヶ月)。人間に例えるなら、80才 で死ぬ人の寿命が、400才まで延びた勘定になる。これだけ長生きするということは、関ヶ 原の戦いを見た人が今も生きているようなものである。きわめて驚くできことである。と ころが、長寿を獲得することは、その分の代償を支払わなくてはならなかった。というの も、線虫の行動がすべてゆっくりになってしまったのである。100メートルを10秒で 走る人が、50秒かかるようになってしまったといえば、わかりやすいだろうか。すなわ ち、長生きしてもその間にできる仕事量は同じなのである。  この遺伝子の変異によってどうしてこのようなことが起こるのであろうかは不明ではあ るがしかし、推測することは可能である。一つの可能性としては、この遺伝子の変異によ って、エネルギーがより効率よく使用されるようになるのではないだろうか。一般に老化 は、代謝等で生じた廃棄物がDNAの損傷を引き起こし、それが蓄積するために死にいた ると考えられている。clk遺伝子が変異した線虫では、すべてのプロセスがゆっくり進むた め、廃棄物の蓄積もゆっくりであり、そのためDNAの損傷等もゆっくりであるか修復可 能な程度なのかもしれない。  この遺伝子は、線虫だけではなく酵母にも存在するらしいことが示唆されている。とい うことは、ヒトにも同様な遺伝子が存在するのであろう。 <感想> 非常に興味深い話でした。もしこれが人間にも使うことができれば、今治らないような病 気にかかってしまっているような人でも病気の進行を遅らせ、しかも長生きできるので、 もしかして技術の進歩を待てばその病気を治すことができるのではないかと思います。 また、寿命が延びても仕事量は変わらないのは不思議だと思いました。 これが人間にも使えるかどうか、またその他の影響はどうか一刻も早く調べてほしいです。 こういったことを考えさせられ、しかも人類にとって有益な研究だと思ったのでこれを読み ました。
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