分子生物学への誘い(癌には癌を)
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<概要> 癌ウイルスであるアデノウイルスの変異株を、p53遺伝子変異を起こした癌細胞に感染 させてやると、癌細胞が死滅、し、しかも、このアデノウイルスの変異株は、p53遺伝子 変異を持たない細胞(要するに正常細胞)を殺すことはなかったという。すなわち、癌 細胞に癌ウイルスをかけたら、癌細胞が死んでしまったというのである。  p53遺伝子変異が関与した癌は、全癌の50%以上といわれているので、単純に計算する と半分の癌が、この方法により完治する可能性があるということなのだ。  アデノウイルスの遺伝子の中で、もっとも有名なのは、E1A遺伝子とE1B遺伝子である。 このE1B遺伝子産物は、p53遺伝子産物に結合する能力(p53の機能を阻害する)を持ち、 それにより、ウイルスの複製ができるようになるといわれている(ちなみにE1A遺伝子は、 RB遺伝子産物と結合することが知られている)。  しかし、このE1B遺伝子に変異が入り、p53遺伝子産物に結合できないE1B遺伝子産物が 出来てしまうと、そのウイルス(dl1520)は、正常細胞内で増殖することができない。一 方、同じdl1520ウイルスであっても、p53遺伝子に変異が入っている細胞に感染すると、 p53遺伝子産物に結合しなくても、すでにその機能がそこなわれいるので、結果的にE1B遺 伝子が働いたと同じことになり、増殖することができるのである(その結果、細胞は死に 至る)。 この実験は、培養細胞のみならず、ヌードマウスに生じた腫瘍を用いても行われ、癌細胞 だけを特異的に殺すという画期的な結果を得ることが出来た。 <感想> これを見ると、やはり癌の遺伝子治療も近い将来実現するのではないかと思う。 それにしても癌細胞が癌細胞で死ぬとは驚きだった。しかし、本当に癌が簡単に治ってし まうようになってしまったら困るのではないかと僕は思う。それは癌が治ってしまうよう になったら人間が死ぬ原因がなくなってしまうからであり、もしそうなってしまったら、 今でさえ世界では人口の増加が問題になっているのにそれこそその原因となってしまうと 思うからだ。こういったことを考えさせられたのでこのホームページを読みました。
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