愛鷹ローム層の標本

標本で観察できる地層


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標本の解説

 この標本は、地表から深さ8mまでのものです。8mもの長さの標本パネルを展示するスペースはありませんので、2mずつ4つに分割して展示しています。左上が地表、右下が最深部になります。
 表土の直下の黒い地層が現世の腐植質火山灰層です。現在の富士山から噴出した火山灰でできており、縄文〜弥生時代の遺物が出土する地層です。この地層中には、約3,000年前に天城カワゴ平から噴出した軽石(KgP)も含まれています。
 現世腐植質火山灰層の下が、愛鷹ローム層の上部ローム層です。上部ローム層のうち、最上部の褐色をした部分は、この層中から旧石器時代の遺物が出土した遺跡の名前をとって、休場層と呼ばれています。愛鷹ローム層には、主な構成物である火山灰に挟まれて、スコリアの層がいくつか存在します。スコリアや軽石は、火山の噴出物のうち火山灰よりも粒径の大きく(2mm〜64mm)発泡したもので、白色のものを軽石、黒色のものをスコリアとよんでいます。上部ローム層中の第1スコリアと第2スコリアとの間には、ニセロームとよばれている層があります。ここには、約24,000年前に南九州の姶良カルデラから飛んできた火山灰(AT)が含まれています。
 断続的に続く暗色の地層がなくなったところからが中部ローム層です。中部ローム層は、部分的にスコリアや軽石があるほかは、全体的に黄褐色で露頭表面がのっぺりとしているのが特徴です。中部ローム層の中ほどには、オレンジ色をした箱根三島軽石(Hk-CC4)があります。これは今からおよそ4万年前に、箱根火山の中央火口丘から噴出したものです。
 中部ローム層の下には下部ローム層があるのですが、残念ながらこの標本ではそこまで含まれていません。 あと5mほど下には、およそ5万年前に箱根火山が箱根東京軽石を噴出したときの軽石流堆積物(Hk-TPfl)が埋まっています。

どうして地層の色が違うの?

 標本を見るとわかるように、ローム層には、黒っぽい色の部分と明るい褐色の部分とがあります。これは、活発な火山活動によって褐色の火山灰やスコリア・軽石が堆積した時期と、火山活動が弱まって草木が茂り、堆積する火山灰中に腐植が多く含まれたために黒っぽい土壌ができた時期とがあったためです。黒い色の地層からは、旧石器など人間活動が営まれていたことを示す遺物も出土しています。ローム層に描かれた縞模様は、火山活動の歴史を物語っているのです。

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