ひとりごと44  「セミの羽化を観察する会」

2016. 8.18  佐藤 憲史

730日,三嶋大社において,「親子でセミの羽化を観察する会」に自然観察指導員として参加してきた.主催は富士箱根伊豆自然観察指導員連絡会である.今回が23回目ということで20年以上続けている活動であり,全国のあちこちでも開催されているようだ.夕方,セミの抜け殻を集め種類を調べたり,セミの幼虫を探し,羽化を観察する.三嶋大社にはうっそうと生い茂る林があり,セミが無数にいる.脱け殻もたくさんあるが,幼虫はなかなか見つからない.夜7時頃になってようやく幼虫が何匹か見つかった.結構堅そうな地面からでも穴をあけて這い出してくる.ゆっくりと動き出し,樹木などに登る.動きが止まってじっとしていると,幼虫の背中が開いて羽化が始まる.頭から出てきてのけぞった姿勢になり,ほとんど体が出てしばらくすると前足で樹木などにつかまり,お尻を出す.脱皮した直後は全体が白っぽく,羽は縮んでずんぐりしている.体と羽が下方にすっと伸びてきてセミの形になる.その姿は白い妖精のようで,徐々に色がついてきて何のセミかわかるようになる.はじめて見た人は感激する.子供のころ,朝早くトンボが羽化するのをみかけたことを思い出す.

三島でもクマゼミが増えてメジャーになっている.数えたわけではないが,鳴き声の多さからしてセミの半数以上はクマゼミではないか.午前中ジャワジャワと暑苦しく鳴く.樹木の比較的高いところにおり姿をあまり見かけないが,体全体が黒っぽく,羽は透明だ.クマゼミはもともと南方系のセミで,西日本以南の温暖な地域でしか見られなかった.その分布が関東地方あたりまで北上してきた.地球温暖化が原因と言われている.そのメカニズムは文献(1)によると,以下のようになる.セミは夏に羽化し卵を産む.卵は翌年の梅雨の頃孵化し,地中に潜る.その年の秋に孵化し地中に潜る種類もいる.セミの胚が成長するためには,ある温度と時間を要し,孵化の時期が梅雨時に合っている必要がある.温暖化で緯度の高い地域でも,クマゼミの卵の孵化時期が梅雨時に同調するようになった.他のセミが減っている原因は定かではないとのこと.

セミはいつ頃から地球にいるのか.リアルな世界にモンスターがたくさんいる.観察するときには蚊に食われるが,蚊は吸血モンスターだ.ポケモンGOなどいらない.

参考文献

(1) 森山 実著,「温暖化によるクマゼミの孵化時期と梅雨の同調」,Zoological Science  2012より

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