ひとりごと その4 「納豆騒動に思う」

20071.30 佐藤 憲史

 

 先日,妻が,スーパーの納豆が売れ切れてなかった,と大騒ぎしていた.確かに,下土狩駅の近くにあるヤオハンでも,納豆のコーナーから品物が消えていた.これは,テレビ番組の「あるある大辞典」で,「納豆にダイエット効果がある」ということを放送してからということだった.それを聞いたときは,そういう効果もあるのかと思ったが,もともとダイエットには興味がなかったので気に留めなかった.納豆の生産者は受注が激増してうれしい悲鳴を上げているだろうが,小3の息子をはじめ,納豆好きの我が家では納豆を入手できないのには困った. 

それから数日して,「あるある大辞典」の放送内容にうそがあることが判明し,番組が打ち切りとなった.番組では,海外の研究者の取材内容を捻じ曲げて放送したという.英語でしゃべっているようだったが,生の声をほとんど聞こえなくして日本語に通訳した声を流していた.その通訳が,全く都合よく変えられていたという.こんなことをしてばれないと思っている製作者は,とても幼稚だ.

子供は,たいてい平気でうそをつく.ばれないと思っているからだ.私もそうだった.しかし,うそは,ばれる.うそをついてばれないと思ってやってきた人は,いつしか本当のことがわからなくなる.子供がうそをついたら,厳しく叱ってやらなければならない.  

私も「納豆にダイエット効果がある」と聞いたときは,そんなものかと疑わなかった.番組を見ていないが,海外の研究者の取材内容など見ていれば,その場は信じていただろう.おれおれ詐欺や融資に絡んだ詐欺など,大金を騙し取られる事件も多い.「私は談合には一切関わっていない」といって,逮捕された知事がいた.政治家にはよくだまされた.人間は簡単にだまされる.「あるある大辞典」は,どこにでもあるある.しかし,だまされた経験をつみかさねると,いろいろ警戒し,疑問を持つようになる.何事も疑ってかかれ,と思ってしまう.疑わなくとも,既成概念を捨て虚心坦懐になれればよいのだが,それが難しい.

最近,プラトン著「ソクラテスの弁明」と「テアイテトス」を読み直した.ソクラテスの「無知の知」ということが思い出されたからである.ソクラテスは徹底して疑問を投げかけた人のようで,「どうして,どうして」とどこまでも納得しない子供のように純粋な人間だったようだ.確かに,量子力学など勉強しても,我々は現実に起こることについて何もわかってはいないと思ったほうがよい.相対性理論も結局は「光速度不変」を信じるしかない.物理がわかるためには,あるところで悟る,信じることが必要だと言った大学教授がいたが,どこかで信じるしかない.信じて,だまされたとわかったときには,しょうがない.