ひとりごと27  「英語の授業」

2010. 12. 27.  佐藤 憲史

 

英語という科目は中学校からあり,ほとんどの高校や大学である.高卒時点で6年間,英語を学んだことになる.学校で学んだことが実際に社会でどれだけ使えるか,英語ははっきりと出てくる.英語の文章を読んだり,外国人と話したりすればすぐに自分の英語力が見えてくる.また,英語にはTOEICという世界共通のテストがあり,自分の英語力が点数で出てくる.そのスコアは,世の中でかなり信用されているようだ.TOEICスコアの統計データが公表されており,例えば2007年の高校生の平均は,388点,大学生は431点である.これらは,IPテストと呼ばれる団体で受験するテストの結果である.自主的に個人が申し込んで行う公開テストでは,全体の平均が579点と高い.英語教育への関心が高まり,日本人の英語力を高めようということで,TOEIC受験が推進され,高専でも実施している.ところで,2007年の高専学生の全国平均は350点となっており,高校生よりも若干低い.TOEICのスコア220点から470点まではDランクとされ,基礎がまだ不十分というレベルである.これを470-730点のCランクにできればよいのだが,卒業時,そこまで到達する学生は1割程度であろう.どのように教育したらいいのか.学生が英語を身につけようという動機や意気込みをもたないと始まらない.また,英語の本を読んだり,英語を聞いたりすることが楽しいということがないと続かない.これらは英語に限らず,他の勉強でもいえる.将来,数学や物理が具体的にどのように必要になるかはっきりしないが,英語が必要になる場面は実に具体的に想像できる.そこで,英語の勉強はやりやすいと思うし,教材もいろいろある.やればやっただけ力が付きそうなものだが,学校の授業だけではTOEICのスコア350点というのがせいぜいなのだろうか.

以前,「ひとりごと17」で,林さんの著書,「楽しい英語『多読』入門」(20096月,丸善プラネット(株))の感想を書いた.その本では「英語の上達は,何をおいても大量の英語を読むこと(そして聞くこと)に尽きる」ということが述べられているが,そのとおりと感じた.昨年度から高専4年の「工業英語」を担当しているが,学生にも英語を読めと勧めている.ところがどっこい,英語教育はそう簡単ではないなと痛感している.授業をやっていて,正確な発音をしているかといわれると全く自信がない.英語で板書すると学生に読めないといわれる.字が下手なこともあるが,私らが習って身に付けた筆記体が読めないようだ.「ゆとり教育」の関係で,英語の筆記体は習わなくなったので,英語の先生もブロック体でやっているとのこと.そこでブロック体で板書するように心がけているが,長年の習性でなかなか難しい.「工業英語」という科目にあった適当な教材が見当たらない.いろいろな文献やウェブから例文を拾ってきて授業をやっているが,学生のレベルを考えると,もっと易しい文章はないかと思う.英語の文章を日本語に訳すという作業ばかりやっていると英語が身に付かない,英語をやるときは日本語を忘れ英語で読み聞きして英語で考えるように,という教えをだれかの本で読んで,それも大事と思っている.具体的には英英辞典を使うとか,英語で授業やるとかであるが,それを実践しようとして破綻した.試験だけは,質問も解答もすべて英語ということを実践している.

 

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