ひとりごと その2

20071.18 佐藤 憲史

 

昨日,117日,沼津高専の推薦入学の募集が締め切られた.わが電気電子工学科への入学希望者は,最低の10名だった.昨年のブレークダウンが再現された.これは偶然ではなく,はっきりとした傾向だ.昭和のいる・こいるのように,「しょうがねー,しょうがねー」と笑いとばしたいところだが,ことは深刻である.推察でいえば,少子化,理科離れ等で高専希望者が斬減しているところで,それが電気電子工学科に集中的に出ているということだろう.電気電子の人気が落ちている要因は,中学生やその保護者が,他の学科に比べ将来性がないと判断しているからだ.例えば,大学から「原子力工学科」という名前がほとんど消えた.私らのころは,原子力工学科は花形学科だった.しかし,受験生のニーズに合わなくなり看板は落とされた.ところが,原子力産業はなくならないし,これからも技術者は必要だ.アメリカは,原子力潜水艦や原子力爆弾を軍が抱えているので原子力工学は衰退することはなく大学もそれに対応した教育と研究を行っている,といわれている.

大学においても「電気電子工学科」の人気が落ちていると聞く.「電気電子工学科」は,「原子力工学科」と同じような道をたどるかもしれない.

電気電子の将来性について,中学生やその保護者には大きな誤解があるのではないか.現実は,電気電子への企業からの求人はとても多い.日本の産業を支えている,大手電気メーカや電力会社などから,電気出の学生への求人は増えている.ある雑誌に「シリコン産業は今はじまったばかり」[1]という記事があったが,電力,通信,半導体など,従来から産業の核であった技術は,その重要性は全く変わっていないし,今後,益々発展する.情報,ロボット,バイオ,ナノテクなど,その時々に注目される技術分野はあるが,10年,20年先を考えるとどうなるかわからない.高専は,専門家になる前段階の15歳から20歳までの基礎を築く大事な時期の教育となる.電気電子という,伝統あり間口の広い学科で学ぶことは,とても将来性があると思うのだが.また,将来性は,今はやりの分野に飛びついてそれに乗っかることで開けるわけではなく,自ら切り開くしかないといえる.私自らそれを実行してみせるしかないことは,重々自覚している.

 

 

参考文献

[1] EDN Japan 別冊,「エレクトロニクスの50年と将来展望」,pp. 28-29, 2007.

 

 

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