ひとりごと18  「お金と景気で気になること」

2010. 1. 4.  佐藤 憲史

 

 2009年にはいろいろなことがあった.特に経済状況は良くなく,学生の就職にもその影響が現れた.「就職できない」ということではないが,希望通りに就職することが難しい状況になっている.2008年にアメリカで起きた金融危機を引き金に,世界的な不況へと突入している.私にはそれがどういうことかよくわからないが,景気はそのうち上向くと期待するしかない.90年代のバブル崩壊,2000年代にはITバブルもあった.これらを経験しているので免疫がある.1990年頃,持っていた公社債をY証券の担当者から言われるままに投資信託へ切り替えた.その時の平均株価は3万円台まで上昇していたが,1993年頃には15千円台と半減した.私の持っていたY証券の資産も半減した.そのY証券は会社自体が消滅した.私の失った額は100万円を超えていたが,日本全体での損失は何百兆円の規模だろう.そのお金はどこに行ってしまったのか理解できないが,何よりも元金が戻らないということが信じられなくショックであった.それまでは年率5%や「10年で百万円を2百万円に」といった金融商品がいろいろあり,お金は増えるものという,何か信仰に近いものがあった.バブル崩壊後も経済の浮沈を見てきた.昨年暮れの平均株価は1万円を何とか超える額であったから,バブル崩壊直後とあまり変わらない.私は2006年春に前の会社を退職したが,その時の幾ばくかの退職金の一部は投資型金融商品になっている.それが今回の不況で大きな損失を発生しており,バブルの二の舞だ.私が関わると株価は下がるのかと思ってしまう.しかし,直接投資に関わらなくとも,銀行の貯金や生命保険などの資金は投資やら国債などに振り分けられている.定期貯金や国債は低利だが一定の利子を保証してくれる.ただし,利率はたいてい1%もない.

 株価は制御不能であるが,人間の経済活動が回っていけばまた良くなるような期待が持てる.気になるのは国債である.来年度の予算案では,収入で税収よりも国債が多くなるという.発行された累積国債は600兆円規模という.それだけ国が借金していることになる.毎年,利子だけで10兆円規模あり,また,国債はあるきまった年限で返済しなければならない.普通に考えれば破たん状態ではないか.国債は国への投資と考えることができる.家を建てるときにお金を借りるように,国もお金を借りていろいろ施設などを造るのはよい.しかし,返せるあてのない借金をすると破たんする.今回のアメリカ金融危機では「サブプライムローン」という住宅ローンのこげつきが原因の一つに挙げられている.日本は高齢化社会に突入しているし,人口減少傾向にある.大きな借金ができる状況にはないのではないか.このような悲観的な意見を述べると,よく言われるのが日本の金融資産のことである.つまり,日本人は1400兆円ほどの金融資産をもっており,国債という形で国の資金に活用することは経済を活発にしていくという意見である.経済が活発化していけば税収が増え,国債を返済できるというのであろうか.計算したわけではないが,返済は無理なような気がする.少子高齢化やCO2削減があり,経済活動は縮小せざるを得ない.税収は減ることはあっても増えることはないのではないか.ただし,こういう計算では人口の動向など,もともと確率的な現象を対象にしているので確定的な結果はでてこない.そうだ,税収には増税という切札があった.国債という形で税金を前借りしているということか.

1400兆円の金融資産というのは4000万世帯で割ると3500万円となり,1世帯当たり平均でそれだけの資産を持っていることになる.これは信じがたい高額だ.資産額に対する世帯数の分布は平均値のまわりにガウス分布しているということはなく,持っている世帯はかなり多く持っており,という偏ったものであろう.企業や団体も含むのかもしれない.日本にはそれだけの蓄え,過去の労働による蓄財があると認めるとして,それを有効に生かしていかないと,またバブルと消えてしまう.国債は安全かどうか市場から判断されるから,売れているうちはまだよいのかもしれない.個人向け国債では,それまで1%程度あった利回りが昨年末には0.4%程度になり,購入するか迷った.

 

 

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