ひとりごと12 「資源のない国日本?」

2008. 9. 12  佐藤 憲史

 

「日本は資源がなく,それを輸入し高度な科学技術を駆使して製品を作り輸出して収入を得る」というのが,いわば日本のビジネスモデルの基本のように言われてきた.戦後このモデルが大成功し,1990年代初頭には,”Japan as NO.1,” といわれた.それがバブル崩壊で破綻して,最近はもっと深刻な状況になっている.

世界中で原油の価格が高騰して大変なことになっている.そこで火力発電では石炭が多く使われており,石炭産業が活況を呈しているという.日本では夕張炭鉱のように石炭産業は終焉してしまったかのようだが,再開もありうるのではないか.過去に石炭の液化技術が注目されていたがどうなったのだろうか.鉄鉱石や希少金属など工業に欠かせない資源の価格も高騰していて,ものづくりが悲鳴を上げている.資源の価格が上がっても最終製品が安くなっては,日本のような国では収入は減るばかりだ.実際,労働者の年収はどんどん下がっている.このような状況はどうして生まれたのか?一つには,中国やインドなどBRICsといわれる新興大国の経済発展が関係しているようだ.このような国々では,資源を自国内にある程度持っているということがあるし,人件費がまだ低いので商売できているのだろうか.日本は,製品の輸出で稼ぐというモデルを捨てて,サービス業を主体に生きていくという道がある.研究開発,ソフト,サポートなどを含む第3次産業は,いまやGDP6割を超えている.いわゆる製造業がGDPに占める割合は2割台になっており,サービス業が主体になっている.「ものづくり」というキィワードでいろいろ語られるが,この言葉はもはや古いのではないか.「ひとづくり」とか「ソリューションビジネス」といった方が良いのではないか.ただし,製造業が不可欠であることは,農魚業が不可欠であることと同じように変わらない.日本は,これまで培った技術をもとに外国でサービス業を展開して収入を得る道があるが,日本人は外人とのコミュニケーション能力に問題があるかもしれない.

よく言われるように,これからはエネルギーだ.それと食糧,穀物の価格高騰もある.食糧を輸入に頼ってきた日本は,危ない状況になっている.

そもそも私は,「日本には資源がない」という表現に疑問をいだいてきた.日本には,豊富な水資源があるし,森林資源もある.四方を海に囲まれていて魚介類や海産物が豊富だ.このような身の回りにある資源を大事にしているのか.諫早湾の干拓事業のように,かけがえのない資源をだめにしているのではないか.「資源がない」というのは偏った見方である.原油や鉄鉱石はほとんどないかもしれないが,そのような資源がある国は非常に限られていて,多くの国は「資源がない」のである.あるもので暮せばよい.私は車の免許がないので,車も石油もいらない.歩けば良いのである.晴耕雨読で,たまに囲碁を楽しんだり,地酒を飲んだりして十分幸福に生きていける.清貧の思想,簡単に言えば貧乏で結構.日本のつましい食事は健康にとても良い.貧乏生活を紹介するテレビ番組があったが,エコ生活であり羨ましく思った.しかし,これをみんなやってくださいとはだれも言えない.教育や医療・介護,警察や防衛など,お金がかかることがたくさんある.ともかく日本にある資源,知的財産も含めて,あるものを活かすしかない.水資源で発電ができるし,稲のもみ殻を合成樹脂にできるそうだ.

 

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