~研究内容~
本研究室では,偏光イメージングに関する研究を行っています.
<研究テーマ>
[1]ストークス偏光カメラによるブラックアイスバーンの偏光特性の解明 内容:寒冷地において,一見すると地面が濡れているだけのように見えて実際には路面が凍結している状態をブラックアイスバーンという.道路を走行中,ブラックアイスバーンに気が付いた時には急ブレーキをかけても間に合わず,自動車の交通事故での死亡原因にもなっている.ブラックアイスバーンは肉眼や通常の撮像カメラでは判別しにくく,そのため,最近では変更カメラなどを用いての判別が試みられている.この偏光カメラを用いる手法により,路面の凍結状態の検知が可能となったが,路面の凍結や濡れの状態の区別には至っていない.そこで本研究では,様々な偏光状態を検出可能なストークス偏光計を用い,濡れ状態と凍結状態で撮像角度を変化させながらそれぞれの偏光成分を比較することで,ブラックアイスバーンの解明を目的とした.計測の結果,凍結と濡れの路面状態と各撮像角度においてストークスイメージに様々な特徴と差が見られた.得られたストークスイメージにおいては,ROC曲線を用い路面の凍結状態と濡れ状態の判別を行うことで,本手法の有用性を確認した. |
ストークス偏光カメラによる路面凍結状態のイメージング |
[2]ミューラー実体顕微鏡を用いた構造色における偏光特性の解明 内容:光学材料や生体試料の偏光特性を微小領域で計測することは材料工学や医用工学などの分野で重要となっている.近年では自然界に多く存在する構造色が着目されている.構造色は色を持たず,光の反射によって生じる発色現象のことで,光が干渉,分光することで見る角度によって色合いが異なる.色素を持たないこの構造色はインクジェット技術に応用されており,半永久的に変色・退色しないインクの開発が試みられており,将来的には波長に依存しない新たな偏光素子の開発に期待ができ,蛍光偏光計測などにも応用ができると考えれる.しかしながら,構造色に対する偏光特性については未だ解明されていない. そこで本研究では二重回転位相子法を用いたミューラー実体顕微鏡を開発し,自然界に存在する構造色の偏光特性を解明することを目的とし, コガネムシなどの偏光特性より,構造色を偏光素子に応用できる可能性を見出した.本研究により,構造色を持つ試料を計測した結果,複屈折が高く,円複吸収もわずかに高い値が得られ,構造色の各種偏光特性を解明することができた. |
ミューラー実体顕微鏡による構造色の偏光イメージング |
[3]全反射型ミューラー偏光顕微鏡の開発 内容:近接場光学顕微鏡は非伝搬光を用い散乱光のみを検出することで光の回折限界を超えた光学検出が可能である.また光学材料のみならず,ウィルスなど微小な生体物質の蛍光偏光検出にも期待できる.そのため先行研究では,近接場ミューラー偏光顕微鏡の開発を行いナノメートルオーダーの分解能で試料の複屈折,複吸収,偏光解消イメージを同時に取得可能となった.しかしながら,測定光が反射と透過を繰り返すため,検出信号が微弱となり,信号/雑音の比(SN比)が悪いといった問題点がある.またAFMチップを面内走査するため,計測時間が限られる生体物質の観察には向かない.そこで本研究では,測定光の反射と透過の回数を減らすために非伝搬光の1種であるエバネッセント光を用いた計測法に着目し,微小物質の偏光特性検出のための全反射型ミューラー偏光顕微鏡の開発を目的としてプリズムの全反射を用いた二重回転位相子法によって全反射ミューラー偏光計測の検討を行った. |
全反射型ミューラー偏光顕微鏡 |