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学生実験 指導書 E3 実験395

「演算増幅器の使い方」 by 望月孔

2005年1月24日 レポートに対するヒントを追加,
2004年11月18日 ミスプリ修正,
2004年11月11日 修正, 2004年11月05日 2004年バージョン = 実験装置変更に伴い大幅改変
2004年10月27日 ミスプリ修正, 2003年10月23日 ミスプリ修正, 2003年10月15日 NEW = 2003年バージョン
2003 2/24 加算回路回り小変更, 2002 1/30 加算回路回り小変更, '01 2/13 2001年バージョン開始 = 以前のものから大変更


I. 目的


II. はじめに

 演算増幅器という素子は, もともとアナログ電子計算機に用いられていた高利得の増幅器で, 加減算,微積分,その他の演算に用いられていた。 集積回路技術の進歩と共に,演算増幅器も集積回路され, 一般の回路に用いられるようになった。 この素子を用いることにより, 増幅回路を始め種々の演算回路を容易にしかも高性能に実現することが出来る。 時には個別部品(トランジスタやダイオード単体) を組み合わせて回路を設計するよりも, 簡単でかつ特性の優れた回路が得られる。

本実験では,演算増幅器の原理,基本的な使い方, 及びいくつかの応用回路を習得する。


III. 原理と基本回路の動作

(1)原理

 演算増幅器(Operational Amplifier, Op-amp,オペアンプ)は, 図1に示すように,

という 5 つの端子から成る素子である。 このうち,電源端子は演算増幅器が動作するためには必須の 非常に重要な端子であるが, 逆に,あまりにも重要すぎて必ず所定の配線が成されているので, 逆に,電源について何も書かずに ◎印の 3 つの端子から成る素子として取り扱うこともある。 (多くの本では,むしろ3端子の素子として扱っている)


図1 op-ampの回路図

理想演算増幅器の特性は,次のように表される:

電源電圧供給端子 Vcc と -Vcc に,所定の電圧を設定すると, 入力電圧に対する出力電圧は,

Vo = Ad * (V1 − V2) (1)
となる。この時,Ad を差動利得という。 理想的には差動利得は∞(無限大)である。

従って,もしも V1 と V2 に僅かでも電位差があれば, 出力電圧は +∞ [V] または −∞[V] になる。この使い方は, 演算増幅器を「比較器」とするものであり,V1 と V2 の どちらの電位が高いか調べるとき等に使われる。 無限大の電源は用意できないため, +∞ [V] を出すはずの条件では 約 +Vcc , −∞ [V] を出すはずの条件では 約 −Vcc に飽和した電圧が出力される。

一方,もしも 出力端子 Vo が飽和していないならば, V1 = V2 となる筈である。 2つの入力端子は直接接続されないのに同電位になることから, この条件を 仮想ショート と呼ぶ。 演算増幅器回路は V1 の端子をグランドに配線することが多い。 その場合,その条件を 仮想接地 と呼ぶ。

また,理想演算増幅器は入力端子にも重要な特性がある。
どちらの入力端子であっても,電圧 Vin を加えたときの入力電流 Iin の関係は, 入力インピーダンス Zin で表わされる。

Zin Vin
Iin
(2)
理想演算増幅器では,Zin = ∞ である。 従って,入力電流は 0 (零)である。

演算増幅器として要求される理想的な特性と, 実際の演算増幅器の特性の比較を表1に示す。 この特性は,データシートから確認することが出来る。 表からわかるように,実際の演算増幅器はほとんど理想に近い特性である。 そのため,演算増幅回路を含む回路を解析する時には, 理想特性を示す素子と仮定してもよい。

表1 演算増幅器の理想特性と,実際の特性
パラメータ 理想特性 μA741 LF356, TL72, TL82, LF411, AD711
差動利得 Ad 100 [dB] 以上 100 [dB] 以上
入力インピーダンス Zin 2 [MΩ] 106 [MΩ]

(2)演算増幅器の基本的使い方(比較器と増幅器)

演算増幅器には,大きく分けて二つの使い方がある。 一つは比較器でもう一つは増幅器である。

1. 比較器

 図1の回路は,比較器(コンパレータ)として動作する。 比較器は,入力 V1, V2 それぞれに別々の入力電圧を加え, 1つの出力電圧を取り出すものである。
 このとき,出力電圧は式(1)で与えられ, 正か負の非常に大きな電圧が現れることが予想される。 ところが実際の出力電圧は電源電圧範囲内に制限されるため, +Vcc から -Vcc を超えることが出来ない。 従って,出力電圧は +Vcc または -Vcc のいずれかであり, その意味は二つの入力電圧のどちらの電圧が高いか, という情報である。
 なお,数学的に考えると, V1 = V2 の時には Vo = 0 になるはずであるが, Ad が極めて大きいことを考えると, 工学的にはそういう状態は殆んど考慮する必要がない。
 入力条件と出力電圧の関係を表2に示す。
 比較器は,アナログ信号をデジタル信号に変換する回路, または,デジタル信号伝送回路の受信部で用いられる.

表2 比較器の入・出力電圧
入力条件 理想出力電圧 実際の出力電圧 (注意)
V1 > V2 +∞ [V] +10 [V] *
V1 < V2 −∞ [V] −10 [V] *
例えば,V1 =1[V],V2 =2[V] −∞ [V] −10 [V] *
注:演算増幅器の電源電圧を +Vcc=+10[V],-Vcc=-10[V]としたとき
注2:理想演算増幅器の出力は電源いっぱい振れる(:この場合±10[V]になる) はずだが,多くの現実の演算増幅器は,電源電圧付近の1〜2[V]は使えない。 (:この場合 ±9 [V]程度になる)
注3:+Vcc と -Vcc は殆んど同じ電圧にする事が普通だが, 場合によっては異なる電圧を用いる事がある。
2. 増幅器

 図2の回路を,反転増幅器と呼ぶ。 この回路では,入力信号が増幅され,出力端子から出力される。 もしも正弦波の入力であれば,出力信号も正弦波である。
 出力電圧は,基本的には電源電圧よりも小さな電圧となるが, 0[V]でもない。即ち,有限の値になる。 有限の値とは,具体的には 1[V] から 5[V] 程度を想定すればよい。 ±Vcc に飽和することはない。 一方,差動利得 Ad は無限大であるため, 式(1)の両辺を Ad で割り算することにより, V2 = V1 が成り立つ。
 両入力端子は直接的には接続されていないにもかかわらず V2 = V1 となることを仮想ショートと呼ぶ。 特に,この回路のように V2 = V1 = 0 [V] となることを特に仮想接地という。

 仮想ショートが成り立つ理由は, 出力端子の電圧がマイナス入力の端子に接続されたことによる。 この配線方法は負帰還と名づけられている。 表3に,図2の回路にノイズが入った場合の回路動作を示す。 ノイズが入った時,回路内でつじつまを合わせ, 差動入力端子と同相入力端子の電位差がゼロになることがわかる。

 負帰還を含む増幅回路の特性を解析するときには, 入力電圧と,V2 = V1 という条件から出力電圧を計算すればよい。


図2 反転増幅器

表3 負帰還増幅回路の原理
状態 回路の状態 入力電圧 出力電圧 正相入力 V1 反転入力 V2
#0. 初期状態 Vi(固定) Vo V1は常に0[V] V2 = V1 (=0[V])
#1. 仮定 Voに雑音が入り
Vo の電圧上昇
#2. 経過1 #1. により V2は上昇
#3. 経過2 #2. により Vo は下降
#4. 結果 Vo は元の電圧に戻る。 V2 は元の電圧に戻る。


IV. 回路,実験手順,課題

op-ampを使った回路を説明すると共に, 実験手順と,実験の課題を述べる。

共通課題

以下に上げる回路について, 理論的に動作を求めると共に, 実際に,または,コンピュータ上で回路を組み,それを動作させて, 各部の信号を観察し, 設計通りに動いているか確認すること。 (場合によってはグラフに記入等,適宜記録法を考えること)


実験


(0) 実験(またはシミュレータ内)で使用する器具

(1) 比較器

次の図は比較器である。理想的な動作は, 反転入力端子と,非反転入力端子の電圧を比較し, 非反転入力端子の電位が高い時には +Vcc が, 反転入力端子の電位が低い時には -Vcc を出力するというものである。
(殆んどの演算増幅器は,電源電圧付近の 1〜2[V]は使えない)


実行例 (これは比較器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません)

実験
  1. ・e1 は振幅 0.975[V] (=1.95 Vpp),1 kHz の正弦波としよう。
    ※オシロスコープの CH1 により e1 を測定しよう。
    実測値 : e1 ( [V] ) =
    ※オシロスコープの CH2 は出力を観測しよう。
    ※オシロスコープの同期は,CH2 によって同期させよう。
    ※オシロスコープのグランドレベルは画面中央に統一しておこう。
    ※出力電圧のレンジを調整して,画面内に収まるようにしよう。
  2. ・e2 は直流電圧 0.488[V] としよう。
    ※オシロスコープの CH1 をつなぎ変えて e2 を測定しよう。
    実測値 : e2 ( [V] ) =
    ・sin(30度)=sin(150度)=0.5 であるから,360度 のうちの 120度, 即ち1周期の 1/3 の期間では出力電圧は -Vcc, 2/3 の期間では出力電圧は +Vcc の筈である。 実験ではどうだろうか記録しよう。
    実測値 : Vo の高い電圧 ( [V] ) =
    実測値 : Vo が 0[V] 以上になっている時間 ( [μs] ) =
    実測値 : Vo の低い電圧 ( [V] ) =
    実測値 : Vo が 0[V] 以下になっている時間 ( [μs] ) =
  3. ・e2 を増減させると,出力が変化することを確認しよう。
    ・電圧を大きくした時,出力電圧が +Vcc となる期間は長くなるだろうか,短くなるだろうか。
  4. ・余裕があるなら e1 の周波数,振幅,電圧 も変えてみよう。

考察課題


(2) 反転増幅器

次に示すのは負帰還増幅回路である。 演算増幅器と抵抗 R1 と R2 によって構成されている。
この回路の電圧増幅率を計算しよう。
負帰還がかかっているため,常に仮想ショートが成り立つため, 反転入力端子の電位は,非反転入力端子の電位と同じく 0V になる。 入力電圧 e1 を与えた時, この時,抵抗 R1 を流れる電流は,

R1 = (e1 - 0[V]) / R1 = e1 / R1 (3)

である。 演算増幅器の入力インピーダンスは ∞ [Ω] のため, この電流は全て抵抗 R2 を流れる。 これより,抵抗 R2 の両端に発生する電位差は,

[抵抗 R2 に発生する電圧] = iR2 * R2 = iR1 * R2 (4)

である。 反転入力端子の電位が 0 [V] であることと, 電流の流れの方向を考慮に入れ, 入力電圧 e1 と 出力電圧 vout の関係を求めるならば,式(5)が求められる。

out = − (R2/R1) * e1(5)


実行例 (これは反転増幅器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません)

実験
  1. ・e1 は振幅 0.975[V] (=1.95 Vpp),1 kHz の正弦波としよう。
    ※本来ここでは増幅度を確認する事が主目的なので, e1 をいくらに設定しても良いのだが, 今回は増幅度以外の実験もしたいため,この電圧に限定します。
    ・R1=10kΩとしよう。
    確認 : カラーコード(4本) =
    カラーコードが示す抵抗値(Ω) =
    ・R2=100kΩとしよう。
    確認 : カラーコード(4本) =
    カラーコードが示す抵抗値(Ω) =
    ・+Vcc=+15V としよう。
    ・-Vcc=-15V としよう。 ※オシロスコープの CH1 によりe1を測定しよう。
    実測値 : e1 ( [V] ) =

    ※オシロスコープの CH2 は出力を観測しよう。
  2. ・理論的に Vout を予想しよう?
    適した理論式と,その計算結果( [V] ) =
  3. ・理論上 オペアンプの マイナス入力端子(仮想ショートの端子)の電圧を予想しよう?
    適した理論の名前と,そこでの電位( [V] ) =
  4. ・測定では Voutは?
    ※オシロスコープの CH2 により測定しよう。
    測定結果: e1が正の値のとき,Voの符号(±)は
    実測値 : Vo ( [V] ) =

    ・理論と測定は一致しているだろうか?
  5. ・測定では オペアンプの マイナス入力端子(仮想ショートの端子)の電圧は?
    ※オシロスコープの CH1 を繋ぎ変えて測定しよう。 入力端子は正弦波に決まっているのだから。
    実測値 : Vo ( [V] ) =
    ・理論と測定は一致しているだろうか?
    考察 :
  6. 深い理解のため,仮想ショートの実験を行う。
      ・+Vccの値を+9.0[V]に変え,出力波形を観察しよう。
      ・出力の何が変わっただろうか?
      ・出力が正弦波でなくなった原因を討論せよ。 (ヒント:◇◇◇を変えたら出力が変わったという事は, 出力を変えた原因は◇◇◇である。)
      ※波形は「一言で言い表せない波形」のはずである。 こうしたときはオシロスコープ画面全てをスケッチして記録しよう。 その際,重要な電圧・タイミングは漏れがないように記録しよう。
      ・議論が終わったら,+Vccは元の15[V]に戻そう。
  7. ・続いて,R2 だけ変化させて 30kΩ とした実験を行いたいが,まずは理論的に予想しよう。
    ・理論上 Voutは?
  8. ・測定により確認しよう。
    ・入出力電圧から計算される増幅度は,抵抗値から予想される増幅度と同じことを確認せよ。
  9. ・2つのプローブを両方とも出力に繋ぎ,出力電圧を測定しよう。 2つのプローブから得られる値は等しいだろうか。

考察課題 これ以降特に
実測値 : Vo ( [V] ) =
といった欄を設けないが,学生が自主的にデータを取ること。
また,測定精度に気をつけること。 (数学で 0.1 と言えば 1/10 だが,工学では 0.1 と 0.10 と 0.100 は別の意味を持つ)


(3) 加算器

加算器の回路を次に示す。 この回路は,反転増幅器の回路を拡張したものである。 この回路でも,演算増幅器の入力インピーダンスは無限大であり, 2つの入力端子には仮想ショートが成立つことから, 出力電圧は,

out = − (R2 / R1) * e1− (R2 / R3) * e2 (6)

で与えられる。 もしも,入力部の2つの抵抗値が等しく,いずれも R ならば,出力電圧は,

out = − (R2 / R) *(e1 + e2(7)

となる.
この回路では2入力の加算器を示したが, 容易に3入力以上の加算器に応用できる。


実行例 (これは加算器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません)

実験
  1. ・e1 は振幅 0.975[V] (=1.95 Vpp), 1 kHz の正弦波としよう。
    ・e2 は 0.488[V] の直流電圧としよう。
    ・R1 = R2 = R3 = 10[kΩ] としよう。
  2. ・出力電圧,仮想接地点の電圧波形を予想しよう。
  3. ・出力電圧,仮想接地点の電圧波形を観測し,記録しよう。
  4. ・予想と観測結果を比較しよう。
    ※このとき,比較しなくてはいけない重要な電圧は, 最大電圧の値と,最低電圧の値である。 数字を使って比較すると,人を納得させやすい。
  5. ・正弦波 e1 の振幅を 2.00[V] (=4.0 Vpp) に大きくした時, 出力はどう変わるか予想せよ。 (間違った予想でも良いから)予想できたなら実験で確認せよ。 (もしも予想と結果が違っていたなら,改めて予想電圧を検討せよ。)
  6. ・直流電圧 e2 を -2.00[V] に変えた時, 出力はどう変わるか予想せよ。 (間違った予想でも良いから)予想できたなら実験で確認せよ。 (もしも予想と結果が違っていたなら,改めて予想電圧を検討せよ。)

考察課題


(4) 非反転増幅器(正相増幅器)

前述の二つの増幅器では,入力電圧と出力電圧は符号が逆であったが, 等しい符号の出力を取りだせる回路もある.それが図5に示す非反転増幅回路 (正相増幅回路)である. この回路でも,負帰還の働きで仮想ショートが成立ち,反転入力端子の電位は, 正相入力端子の電位と等しいため,V2 = V1 となる. また,演算増幅器の入力インピーダンスが無限大のため, 抵抗 R1 と R2 には同じ大きさの電流が流れる.そのため, 入力電圧 e1 と 出力電圧 Vout の関係は,

out1 + R2
1
e1 = (1+2
1
)e1
(8)

で与えられる。


実行例 (これは正相増幅器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません)

実験
  1. ・e1 は,振幅 2.00V (=4.0Vpp),1kHz の正弦波としよう。
    ・R1=10kΩ,R2=10kΩとしよう。
  2. ・各部の電圧を理論的に予想しよう。
    ・測定し,結果を記録しよう。仮想ショートについても観測・記録せよ。
  3. ・R1を開放(=抵抗を外す)とし,結果を記録しよう。
    ※R1を無限大とした回路は「バッファ」と呼ばれている。

考察課題


(5) 積分器

能動素子を使用しないで抵抗とコンデンサだけで積分回路を構成すると, 信号の周期が回路の時定数 τ = RC よりも充分に小さくなければ出力信号に誤差が生じてしまう。
そこで,演算増幅器を使い,理想的な積分波形が得られる回路が設計された。 それが次の図である。 この回路でも負帰還の働きで仮想ショートが成立つため, 反転入力端子の電位は 0[V] である。
この時,抵抗 R を流れる電流は,

i = e1 / R1 (9)

である。 演算増幅器の入力インピーダンスは無限大のため, この電流は全てコンデンサ C を流れる。 これより,コンデンサ C に発生する電圧は,

[コンデンサ C に発生する電圧の大きさ] = Q / C = (1/C) ∫i dt (10)

である。 ただし,Qはコンデンサに蓄積された電荷量である。 電流の方向,反転入力端子の電位を考慮に入るならば, 出力電圧 vout は,

out = − 1/(CR) ∫ e1 dt (11)

となる。
入力が方形波とすると,e1 は特別な時間帯を除けば一定である。 即ち,コンスタントであると考えられる。 コンスタントを積分すると,積分変数の一次式になる。


実行例 (これは積分器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません。 また,この図のV3は今回の実験では使いません)

実験
  1. ・R1 の左側端子に入る電圧は, 振幅 2.0V (=最大値 2.0[V],最低値 -2.0[V]),500 Hz の方形波としよう。
    ・R1=10kΩ, C1=0.1μF としよう。 (図では C1=0.01μF)
    ・R2=1MΩとしよう。(大きければどんな値でも可) この抵抗は非常に大きいので,回路解析の際は無視して構わない。
    ・結果を記録しよう。
  2. 出力電圧が,R1, C1, 入力信号の振幅, 周波数から理論的に求められる値と一致しているか確認し, 記録せよ。

考察課題 注意


(6) 発振器


実行例 (これは発振器の別の実現例であり,下の説明とは直接関係しません。

実験

    R1=10kΩ,R2=10kΩ, R3=10kΩ,C1=0.01μFとしよう。
  1. 各測定チャンネルのレンジとグランドレベルを合わせよ。
  2. 結果を記録しよう。

考察課題


その他,自由に回路を作ってみよう

例1:差動増幅器

二つの入力信号 e1 と e2 の差を増幅する差動増幅回路を次に示す。 この回路は, ちょうど反転増幅回路と非反転増幅回路を組み合わせている。 出力電圧は,

out = (R'/R) e2 − (R'/R) e1 (12)

で与えられる。ただし,R2 = R4 = R', R1 = R3 = R とする。


実行例↑

特に義務ではないが,有志の学生は実験してみて欲しい。

例2:???回路

トランジスタ Q1 の上にある,緑の四角形は, 負荷抵抗を表わす。
もしも,この回路図を参考に回路動作をチェックしたければ, 四角形の代わりに,抵抗や,コンデンサなどを入れてみれば良い。
ヒント:
"何を入れてもよい"ということは,「どんな時でも同じ動作をする」 と考えられる。 回路動作から考えると,どんな時でも同じ動作をするものとして直ぐに思い浮かぶのは, "電源"である。 電源には定電圧源と定電流源の2種類あるが, いずれの場合にも回りの回路によらず一定の電圧(または電流)を供給する。


注:この回路はこのままでは動きません。↑


V. 考察課題(まとめ)

(1)各実験それぞれの課題について考察せよ。
(2)差動増幅器の出力の式(12)について, まず,抵抗マッチング条件 R2=R4,R1=R3 が成り立たなかった場合の式を求め, 抵抗マッチング条件 R2=R4,R1=R3 が成り立った場合に式(12)になることを確認せよ。
(3)例2 の回路の回路動作を説明せよ。


VI. 参考文献

アナログ電子回路(藤井信生)昭晃堂 1984年


付録 a. 抵抗値の読み方

                 
01234 56789
例:
 茶 赤 橙 = 1 2 3 = 12. × 103 = 12. kΩ


付録 b. コンデンサの読み方

                 
抵抗値の読み方と同様のルールが適用されるが,次の2点が抵抗の場合と異なる。
・数値がそのまま印刷されているので,色などと数値との対応を新たに覚える必要がない
・単位の基本は pF (ピコ ファラッド = 10-12 ファラッド)である
例:
 2 2 4 = 22. × 104 pF = 220. nF = 0.22 μF
なお,マイクロファラッドのオーダの容量では,そのまま値を印刷してあるものもあります。


付録 c. データシートの見方

                 
IC(Integrated Circuit = 集積回路) は,黒いプラスチックパッケージに,2列になってたくさんの端子がついた形が基本的な形である。 IC がどういう機能を持っているか,どのように調べたらよいか,以下にまとめる。
  1. IC には文字が刻印されている。そのうちの小さな文字はロット番号と呼ばれるものであり, どの工場でいつ生産されているかを示している。
  2. IC に刻印された文字のうち大きなほうは,型番を表わす。
  3. IC の型番のうちの最初の2文字程度は,その IC を生産する会社を表わす。
    例:
    AD = アナログデバイセズ社
    AM = デイテル社
    AN = 松下
    CX = ソニー
    HA = 日立
    ICL = インターシル社
    LF = ナショナルセミコンダクター社
    LM = ナショナルセミコンダクター社
    MAX = マキシム社
    NJM = 日本無線
    OPA = バーブラウン社
    TL = テキサスインスツルメント社
    μA = フェアチャイルド社
    μPC = 日本電気
  4. その IC を生産する会社に電話等で「データシートを送ってくれ」と連絡すると, たいてい無料で送ってくれる。
  5. IC のデータシートを見て,最初に見るべきは,「最大定格」であろう。 この値を超えると IC が壊れてしまう(ICの動作が保証されなくなる)。 電源電圧の範囲と,動作温度範囲を確認しよう。
  6. IC の各ピンには番号が付けられている。 番号付けの順序は,マークのついている場所を1番ピンとし, そこから半時計回りに順繰りに回っている。
    したがって,全部で14本の足を持つICの8番ピンと,全部で8本の足を持つICの8番ピンは, かなり離れた位置にある。しかし,現在,四角形の IC も販売されていることから, ぐるりと回って番号付けする名づけ方は一般性が高い。
  7. ピン配置図を確認しよう。TL072 の場合には,8ピンのパッケージの中に, 2回路のop-ampが入っている。
    電源ピンがあることも確認しよう。
  8. IC の特性には,3通りの書き方がある。Max と Typ と Min である。
    Min とは,最小値で規定するものであり,理想的には大きいほど良いものに適用される。 例えば,「利得」はMinで規定される。
  9. Max で規定されるのは,理想的には小さいほど良いものである。 例えば,オフセットはMaxで規定される。
  10. Typ で規定されるものもある。Typ とは「標準値」という意味である。 これは,もしも100個のICがあるとしたら,その値の大きいものから小さなもまで順番に並べたとき, 50番目のものがもつ特性と考えてよい。
    注意しなければならないのは,「平均」でないという点である。 例えば,3つの素子それぞれが 100,10,1 という特性を持つと,平均では 37,標準では 10 となる。 回路の特性は対数的に変わることが多いので,標準値の考えのほうが実際的である。
  11. これらの特性が保証される「条件」についても考えておこう。 特に断わりが無ければ,表の済に温度条件等が書かれており,それが測定条件になる。
  12. 場合によっては特別な条件のもとでのみ保証された特性もある。そういう場合は必ず書いてある。


付録 d. オシロスコープを使った波形観察のコツ(ピークtoピーク,Vpp)

                 
オシロスコープ上で観測した波形が,正弦波や三角波などよく知られた波形だった場合には, その振幅を測定する際に,最大値と最小値の差を測り, その値を Vpp (ピークtoピーク電圧)で記録します。
例えば,100[V]の商用電源の場合,
実効値最大値最小値ピークtoピーク
100 [V]141[V]-141[V]283[Vpp]
となります。
 ピークtoピークを測定を,最大値の測定を比べると, いちいちGNDレベルを設定しなおす必要が無いため素早い測定が可能であり, レンジが倍になるため精度も上がるというメリットがあります。
 正弦波の場合,正と負の電圧は同じですから, ピークtoピーク測定さえすれば振幅も分かります。 しかし,例えば比較器の出力のように, 正負の電圧が必ずしも同じとは限らない場合, ピークtoピーク測定の測定をしても +Vcc の値(と -Vcc の値) は分かりませんので注意しましょう。


付録 e. CV の起動と使い方

                 

回路シミュレータの起動

実験の準備のために以下の処理をして下さい。
  • スタートボタンを押し,
  • ファイル名を指定して実行... を指定し,
  • "\\farad\app\circuitv\Cv_prevw.exe" と打ち込み,
  • 「OK」ボタンを押して,ソフトを立ち上げる。

ソフトの使用法について

ソフトは直感的に使えると思います。
以下に,質問の多かったことについて,まとめます。
  • op-amp を使うときは,必ず5つの端子のある素子を選んで下さい。 そうしないと,幾つかの回路は動作しません。
    また,5つの端子それぞれの機能を十分に考えて配線すること。 電源端子には,+15V または -15V の直流電圧を配線し, 信号入力端子には信号を入力しよう。 (信号入力端子へ電源をつないでいた人を見掛けたので)


付録 f. レポートの書き方:一つの提案

                 
☆レポートの効率的な書き方の例をこっそり(!?)教えます。
  • それは,この電気工学科の演習室で,ワープロを使ってレポートを書くことです。
  • サーバコンピュータ"FARAD"上にあるアカウント名と同じ名称のディレクトリは, 学生がファイルを専用に保管できる領域ですから, もしも作業が明日以降にずれ込んでも安心です。
  • Windows上のソフトウエアで共通的に使うことのできる「コピー & ペースト」 機能を使うことにより,指導書を写す手間が大幅に楽になります。
  • この演習室にはプリンタもありますから,ここで出力できます。
  • フロッピーディスクを持っていて,家に同じワープロがある人は, 自宅で作業を続けられます。 (注意:もしも同じワープロだがバージョンが古いという場合は, この部屋でセーブする時に「ファイル名を指定して保管」 というメニューを選び, その際にファイル形式として古いバージョンを指定しよう。
  • もしもここに今表示されているところを全部コピーしてワープロするならば, 「必要なところを取捨選択する」 ように。 この文章には,ここのコラムなどレポートに不要な部分があります。 「ふさわしくない部分が残されたレポート」 が減点対象になることは言うまでもありません。


付録 g. CV 画像のワープロへの取込み

                 
☆画像のワープロへの取込み
Windows上のソフトウエアで画面上に描かれた画像は, 次の操作でワープロ上に貼り付けることが可能です。
  1. 前提条件の確認:ワープロも, 画像を取り込みたいソフトウエアも立ち上っている。
  2. 取り込みたい画像が表示されているウインドウを,アクティブにします。 (マウスを持っていって,作業と関係の無いところをクリックすれば良い)
  3. 「Alt」キーを押し始めます。
  4. 「Print Screen Sys Rq.」というキーを押します。
  5. 「Alt」キーを放します。
  6. ワープロのウインドウを,アクティブにします。
  7. 画像を張り込みたいところをマウスでクリックします。
  8. 「編集」メニューから「張り付け」を選択します。
重要:画像の数は最小限に減らし, それぞれも波形が分かる範囲でなるべく小さくしよう。 ←画像はべた画面になるため, 印刷のインクが異常に減る原因になります。

以上.