1.4 立方最密充填

 前の節では、最密充填層を3つ積み重ねて、六方最密充填を作りました。この節では、もう一つの積み重ね方の「立方最密充填」を紹介しましょう。

 下の図を見て下さい。この図は、最密充填層の2層の積み重ねを真上から見た図です。2層目の最密充填層の上にもう一層最密充填層を積み重ねて3層にするには、3層目の球を「A」の位置のくぼみに置く方法と、「C」の位置のくぼみに置く方法の2つがあります。

3層目の2つの選択

 もし「A」の位置に球を置くのならば、真上から見ると第一層の緑の球と同じ位置に球が置かれることとなります。この場合は第三層は第一層と同じになりますから、先の節に出てきたABABA...の積み重ね、すなわち六方最密充填となります。

 では、「C」の位置に球を置くとどうなるでしょう。この場合の第3層は、第1層とも第2層とも違いますから、ABCという積み重ねになります。ABCABC...の積み重ね方で3層積み重ねた例と、6層積み重ねた例を下の図に示します(図をクリックするとVRMLが表示されます)。比較のために、その右にはABAB...の積み重ね方も表示しています。両者をよく比較してみてください。

ABCのパッキング   ABCABCのパッキング

ABCのパッキング   ABCABCのパッキング

 さて、ABAB...の積み重ねが六方最密充填と呼ばれるのに対して、このABCABC...の積み重ねは立方最密充填(Cubic Closest Packing)、または英語の頭文字をとって ccp と呼ばれます。なぜなら、このABCABC...の積み重ねは、面心立方格子になるからです。面心立方格子にするためには、ABCABC...の積み重ねを斜めにして視点を変えなければならないので、このことを頭の中で理解するのは少し難しいかもしれません。下の左の図は、4層の立方最密充填を示しています。これを斜めにすると右の図のように、面心立方格子になります。実際にVRMLで回転させてみるとよく分かると思います。

面心立方格子  面心立方格子

 また、格子をつけたVRMLも下に用意しました。

面心立方格子

 このことから、立方最密充填は、面心立方格子( Face Centered of Cubic )の英語の頭文字を取って、fcc と呼ばれることも多いです。


この節のまとめ