ヴィシュヌは、その起源があまねく広く広がる光で人間に住居と安全を与えるとされるように、すべてを包み込む寛容で慈愛あふれる神である。
ヴィシュヌ像は普通、青黒い肌、四本の腕、蓮華のような目で描かれる。胸に仔牛の印(vatsa)がついているのは、偉大な仙人バラドヴァージャが祈りっているところを邪魔したとき、投げかけられた水の跡とされる。黄色い衣をまとい、円盤、ほら貝などを手にしている。ヴィシュヌには黄金の八輪の戦車があり、また怪鳥ガルダを乗り物とする。アナンタ(あるいは、シェーシャ)竜王の上で、妃のラクシュミーとともに憩う姿がよく描かれる。また、水中に眠る姿のヴィシュヌもよく描かれる。臍から蓮華が生え、その蓮華からブラフマーが生まれ、世界が創造されたという神話による。
ヴィシュヌは、ハリ、ナーラーヤナなどとも呼ばれる。この他にも多くの異名がある。『マハーバーラタ』の「アヌシャーサナ・パルヴァン」第135章(プーナ批判校訂版 13.135.1f.)は『ヴィシュヌ・サハスラ・ナーマ』(ヴシュヌの1000の名)と呼ばれる部分で、単独で抜き出して読まれる。ここにはヴィシュヌの1000の名を称える功徳が説かれる。いわば、称名の思想である。臨終のとき、ヴィシュヌの名の一つでも称えれば、天界に救われるという信仰もある。
また、ヴィシュヌの特徴は多くの化身(アヴァターラ avatāra)を持つことであるが、これは次の節で説く。