第4節 自由思想家(沙門)たち

 商業都市の成立にともない、それまでの思想の担い手たちであった婆羅門以外にも多くの自由思想家たちが現れた。彼らは婆羅門(ブラーフマナ)に対し沙門(シュラマナ、 努める人々、修行者)と呼ばれた。ブッダやジャイナ教のマハーヴィーラも、シュラマナの群れの中から現れた。11)

 原始仏典には、ブッダと同時代の思想家たちの説がさまざまなかたちで伝えられている。そのうち、『沙門果経』には、当時の代表的な六人の自由思想家たち(六師外道)プーラナ・カッサパ、マッカリ・ゴーサーラ、アジタ・ケーサカンバリン、パクダ・カッチャーヤナ、ニガンタ・ナータプッタ、サンジャヤ・ベーラッティプッタの思想が紹介されている。12) いずれも婆羅門とは異なる沙門の思想で、仏教が成立したころの古代インドの思想状況を反映している。六人のうち、プーラナ・カッサパ、マッカリ・ゴーサーラ、パクダ・カッチャーヤナの三人はアージーヴィカ派の思想家と考えられている。


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11)中村元『原始仏教の成立』(中村元選集12)春秋社、1969年、71頁以下参照。【本文へ】

12)長尾雅人編『バラモン教典・原始仏典』(世界の名著1)中央公論社、1969年、505頁以下。【本文へ】

参考文献
 Basham, A.L., History and Doctrines of THE ĀJĪVIKAS, 1951 London (rpt. 1981 Delhi).