ヴィシュヌの特徴は多くの化身(アヴァターラ avatāra)を持つことである。アヴァターラはもともと「下る」という意味の動詞アヴァタラティに基づく語で、一般的には 「神が地上に降下すること、この世に現れること」を意味するが、特にヴィシュヌがこの世でとるさまざまな姿、すなわち「化身」という意味で用いられる。
ヴィシュヌのアヴァターラにはさまざまな説があるが、代表的なのは10化身説である。10化身として数えられるのは、(1)マツヤ(魚)、(2)クールマ(亀)、(3)ヴァラーハ(イノシシ)、(4)ヌリシンハ(人間ライオン)、(5)ヴァーマナ(小人)、(6)パラシュラーマ(斧を持つラーマ)、(7)ラーマ、(8)クリシュナ、(9)ブッダ、(10)カルキンである。
これらのうち、とりわけ叙事詩の英雄ラーマとクリシュナを化身として取り込むことにより、ヴィシュヌ信仰は盛んになった。